第13話
「「「「「……」」」」」
人が多い中で発生したこの静寂こそ、圧倒的な沈黙と呼ぶべきか。3-Aの教室内、誰もがスマホやタブレットを手に息を呑んでいるのがひしひしと伝わってくる。
まあ、そりゃそうか。これから生き残るためにはどれだけ良いスキルを獲得できるかどうかにかかってるんだし、なんせ選択画面になってからは10秒くらいしか猶予がないこともあり、選べる物がなくなるまで異様に早いからな。
――お、5分ほど待っていたら遂に来た……。待ちに待ったスキルの選択画面が出てきたが、やはり物凄い勢いでガンガン消えていくのがわかる。はっきり言って、みんな適当にアイコンにタッチして選んでるんじゃないかとさえ思えるレベルだ。
だが、こういうときこそ安易に便乗せず、なるべく慎重に見極めたい。凡庸なスキルを得たとしても【飛躍】が押し上げてくれるかもしれないとはいえ、それだけは絶対に譲れなかった。
「―――っ!」
これだ。ほんの僅かな時間が経過してから俺が人差し指で触れたのは【覗き】と書かれたスキルのアイコンで、指で上下左右にスライドしていたとき、みんな選ぶのを躊躇したのか一つだけ消えなかったものだ。
スキル名が自分の目に入った瞬間、もしかしたら鑑定できる効果じゃないかって思ったんだ。実際はどうかわからないが、そうだとしたら便利だし猛烈に欲しいスキルの一つだからな。
ただ、なんでこれだけ中々選ばれなかったんだろう? ん、周りにはいかにも無念そうに頭を抱えたり項垂れたりする男子生徒の姿が目立った。これは、まさか……。
「チッキショー!【覗き】スキル、選ぼうと思ってたのに誰かに取られた―!」
「ぼ、僕もだぁ……。変態呼ばわりされると思って一瞬ためらったのが馬鹿だった……!」
「俺も俺もっ! あーあ、あのスキルで色々覗いてみたかったぜー」
「うわー、男子って最低ねっ!」
「変態っ!」
「ホント、こんなときにスケベなことばかり考えてバッカじゃないの!?」
「…………」
なるほど、そういうことだったのか。男子たちの嘆きを前にして女子たちもお怒りの様子。実際どうなのかと思って使ってみたら、俺はとんでもないものを目にすることになった。こりゃやばい。服だけでなく、下着の向こう、さらには廊下の向こうとか全部透けて見えてしまったんだ。
って、待てよ。【覗き】スキルの隣に【魔眼】っていうスキル名のアイコンがあるんだが……まさか、これも【飛躍】スキルの影響を受けたのか?
平野迅華の【剣士】スキルが【狂剣士】になり、狐色のホウキが狐耳亜人のシフォンになり、【覗き】が【魔眼】になった格好なわけだから、もう【飛躍】のおかげなのは確定的といっていいだろう。
おそらくこれこそが鑑定スキルのはずだってことで、俺は試しに【魔眼】を使って自分のスキルの詳細を調べてみた。
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スキルの名称【飛躍】
効果1 他者のスキルを一つだけ、一時的に超強化することが可能。
効果2 端末で何かを獲得した場合、格段に飛躍したものも入手できる。
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やはりそうか。平野が言ってたように超当たりスキルだったな。この調子で【覗き】と【魔眼】を確認してみるとしよう。
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スキルの名称【覗き】
効果 対象の服や壁等、障害物だと思うものの向こう側が透けて見える。
スキルの名称【魔眼】
効果1 スキルや道具、武器等の鑑定ができる。
効果2 ターゲットの弱点等、対象のステータスを確認できる。
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なるほどな。一番良いスキルは【飛躍】だと判明したわけだが、説明を見ると【魔眼】がいかに優れているかもよくわかる。まあ、【覗き】だってある意味では優秀だ。この時点でほかの連中とはかなり差がついたといってよさそうだ。
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