2-11
高知駅から僕らは南へと歩き出す。
とでん(路面電車)も通る大きな道路に沿って歩くと、道の脇には見慣れたキャラクターの姿も見える。
「アンパンマンやねー」
「あっちに、ばいきんまんもいるよ」
道路脇の花壇の中やベンチの上に、アンパンマンたちの石像が置かれている。
高知では、いたるところにアンパンマンの姿を目にすることが出来る。高知で生まれた子供たちは、自分の身を削ってみんなを笑顔にするヒーローに幼い時から親しんでいるんだ。
僕ら地元民はいつも見ているアンパンマン像だが、観光客はこの辺で記念写真を撮ったりするのだろうか。
と言うか、そんな見慣れた石像の話題を振らないといけない状況がマズイだろ。
「えっと……」
もっと弾むような話題を、と思っても何も浮かんでこない。
二人で並んで歩いているのに、僕の口は閉ざされたまま。視線は話題を求めて、あちこちをさ迷っている。これじゃ一人で歩いているのと同じだ。
「あっ、今日は日曜市やねー」
何かに気が付いた弓削さんが声を上げる。
気が付けば昔、ルイ・ヴィトンがあった場所まで来ていた。ここまで歩いてきた大きな道路と垂直になって、西の方にも大きな道路が伸びている。
ここを西に曲がった先の住所は
「ホントだ。見てく?」
「う~ん……でも、混んでそうやし」
確かに、そうだな。
日曜市が催されているのは道路の上だ。ここから高知城までは、中央分離帯にフェニックス(カナリーヤシ)が並ぶ広くて長い道路が続いている。
よさこい祭りのメイン会場にも使われている道路だが、よさこい祭りの期間を除いた毎週日曜日には三百店も並ぶマーケットと化す。車道の左右に店を開いているため、歩けるスペースが狭いんだ。
「それじゃ、そっち(歩道)から行こうか」
「うんっ」
車道のマーケットの中は混雑して歩きづらそうだから、僕らは脇の歩道を進むことにした。
こっち側は空いてるから楽に通れる。外から日曜市の活気を眺めるのも、いいもんだ。
南国土佐とは言うが、フェニックスの並木道に開かれる日曜市はちょっとした異国情緒を漂わせている。南国フルーツを扱った店なんかを見ていると、なおさらだ。
「あっ。ここのタピオカミルクティー、美味しいんよねっ」
弓削さんに言われて、反射的に視線を日曜市とは反対方向に向ける。弓削さんは一軒のタピオカ屋を指差していた。
こんな所に、話題のタピオカミルクティーを売ってる店があったのか。とことん世間の流行から遅れている僕だな。
『へぇ、そうなんだ。飲んでみたいな』『それじゃ、僕がオゴるね』『弓削さんのおススメは何かな?』
いくつか浮かんだ言葉の中でどれを口に出そうか考えてる内に、弓削さんはタピオカ屋へと向かってしまった。
僕も慌てて追いかけて財布を取り出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます