第219話 最強の助っ人?

「うぅ⋯⋯」


 俺は相手の魔法を食らってしまい、地面に這いつくばっていた。

 風の盾である程度威力を防げたからいいものの、まともに食らっていたら確実に死んでいた。

 しかし身体は満身創痍だけど、まだ意識はあるしMPも殆ど残っている。

 このまま何もせずに死んでたまるか!


「ク、クラス5完全回復パーフェクトヒール⋯⋯ジェ、創聖魔法ジェネシス


 回復魔法を唱えると身体が光に包まれ、受けた傷が消えていく。

 そして俺は立ち上がり、カゼナギの剣を手に構える。


「おいおい、死に損ないだったのに復活したぞ」

「情報ではどんな傷も治す魔法と、魔物の集団を一撃で沈める魔法、規格外の身体強化魔法が使えると聞いています」

「確か補助魔法使いだろ? 補助魔法にそこまで強力な魔法があるのか?」

「いえ、私の知る限りではありませんね。おそらく魔法の言葉を口にする際、語尾にジェネシスとつけていることが関係しているのでしょう」


 バレてるな。

 しかも二人は俺のことを調べてこの場に立っている。

 相手のことを何も知らない俺とは大違いだ。

 二対一ということも踏まえ、戦う前からこちらがかなり不利な状況だということは間違いない。

 悔しいがここは一度退いて、万全の体制で迎え撃った方がいい。


「俺はまどろっこしいことは嫌いでね。おい! その魔法はなんだ。教えろ」

「教えろと言われて教える人はいませんよ。むしろあなた方の正体を教えてもらえませんか」

「それで教えるバカはいねえだろ」

「それならそういうことです」


 これ以上こっちの情報を与えてたまるか。


「言われてしまいましたね」

「口の減らないガキだ。俺は口だけの奴は認めないぜ」

「私もです。そのような者に私の⋯⋯」


 私の? 何だ?

 もしかしてそれが俺を襲う理由なのか?

 それがわかれば相手の正体がわかるかもしれない。

 だが今はそのようなことを考えるより、この場を離脱することが先決だ。

 まずはカゼナギの剣で風を起こし、その後でクラス4闇霧ダークミスト創聖魔法ジェネシスで視界を遮り、街へと逃げる。

 戦いで勝ち目はないけど、逃げるだけなら何とかなるはずだ。


「この世に未練はもうねえか」

「いや、俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。必ずあなた方を倒してみせる」


 今じゃないけどね。

 俺は逃げることを気づかれないようにするため、戦意を相手に向け続ける。


「よしいくぞ! 放て烈――」

「リック!」

「リック様!」


 俺がカゼナギの剣の風を放とうとした瞬間、突然声が聞こえた。

 この声は⋯⋯


「エミリア! サーシャ!」


 そして二人の後方にはノノちゃんとリリがいる。


「尾行⋯⋯私、気づいていた」


 どうやらリリが追跡者に気づいて、エミリアとサーシャを連れてきてくれたようだ。


 だが。


「四人とも逃げろ! この二人はただ者じゃない!」


 情けない話だが、この二人を相手にしてノノちゃん達を守りきれる自信がない。


「俺のことはいいから街に逃げるんだ!」


 俺は必死になって声を上げる。

 しかしノノちゃんとリリは足を止めてくれたが、エミリアとサーシャはむしろさっきよりスピードを上げて、外套を着た男達の元へと向かっていた。


「エミリアサーシャ止まれ! 二人がかなう相手じゃない!」

「よくも! 絶対に許さないから」

「さすがの私でも今回の件は看過できません!」


 しかし二人は頭に血が昇っているのか、止まる気配がない。

 剣士で、猪突猛進タイプのエミリアならわからないこともないが、魔法使いで、普段冷静沈着なサーシャまで突撃する意味がわからない。


 このままだと二人は殺される。

 俺の脳裏に最悪な事態が過る。


 だけど何故だかわからないが、外套の男達は二人の行動に慌てふためいていた。


「げっ! やべえぞ」

「だから私はやめようと忠告しましたよね」

「何言ってるんだ。お前だってノリノリだったじゃねえか」

「さ、それは⋯⋯一度彼の実力がみたいと思っていましたので」

「だったら文句を言うんじゃねえ」


 どういうことだ? 外套を着た奴らが言い争いを始めたぞ。

 どうしてこうなったのか、本当にわけがわからない。


「ごちゃごちゃとうるさいわね! これでも食らいなさい!」

「正義の鉄槌を受けて下さい!」


 エミリアは剣士の男に飛び蹴りを、サーシャが魔法を使う男に向かって平手打ちを放つ。


 無茶だ! 実力者の二人が食らうはずがない!

 と思っていたら、二人はエミリアとサーシャの攻撃をまともに食らい、地べたをボロ雑巾のように転がるのだった。




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