第218話 激闘

 悔しいが接近戦は向こうの方が上だ。

 わざわざ相手の得意分野に付き合う必要はない。


「クラス3炎の矢フレアアロー創聖魔法ジェネシス


 俺が魔法を唱えると無数の青い炎の矢が生まれ、剣士の男へと向かっていく。


「やるじゃねえか。だが魔力を集めていることがバレバレだぞ」


 剣士の男は俺が魔法を放った瞬間に横に飛び、魔法をかわした。

 だがまだ背後にはもう一人いる。

 一人でも倒せれば⋯⋯


「クラス3水矢魔法ウォーターアロー


 しかし後ろにいた男が水の矢を放ち、炎の矢が相殺されてしまう。


「嘘だろ!?」


 精霊魔法で俺の創聖魔法と同じ数の矢を放ってきた。しかもいくら火と水でこちらが相性が悪いとはいえ、全て消されてしまうなんて。

 今まで剣に関しては、目の前の男も含めて俺より上だと思う人はいた。

 だけど魔法に関しては、俺だけが使える創聖魔法があるため、誰にも負けない自信があった。

 けどその自信は簡単に打ち砕かれる。


「おいおい。今は驚いている場合じゃないぜ」


 そしていつの間にか目の前に現れた剣士の刃が、俺に振り下ろされる。

 確かにこの男の言う通り、今は呆けている場合じゃない。


 俺は向かってきた剣を受け止め、腹部目掛けて蹴りを放つがバックステップでかわされてしまう。

 だが今がチャンスだ。


「放て烈風!」


 このタイミングなら避けることは出来ないはずだ。

 俺はカゼナギの剣に魔力を込めて、その力を解放した。

 目に見えない暴風が剣士の男を襲う。


「くうっ! まさか特殊な剣を持っているとは!」


 剣士の男は暴風をまともに食らい、派手に後方へと吹き飛んでいく。

 このままだと魔法を使う男に激突して、二人にダメージを当てることが出来る⋯⋯はずだった。


「やれやれ。油断大敵ですよ」

「まあそう言うな。一瞬で終わらせてもつまらないだろ? リックにはもっと苦しんでもらわなくちゃな」

「同感です」


 しかし剣士の男が魔法を使う男に当たる直前、空中で何かに受け止められた。


「そんなバカな!」


 そしてさらに剣士の男はまるでゴムのように反動を使って、こちらに突っ込んできた。


「それならこのまま迎え撃ってやる」


 俺は右手に持った剣を引き、剣士の男に向かって突きを放った。


「ミーティアスラスト」


 十五に分かれた剣が剣士の男に襲いかかる。

 男は宙を浮いているため、この攻撃はかわせないはずだ。

 だが男はここでも俺の予想を上回ることをやってきた。


「面白い。ならば力比べと行こうか⋯⋯ミーティアスラスト!」


 男は左手に持った剣を引き、突進した勢いも乗せて前方に突きを放つ。

 その突きは動体視力を強化したことでかろうじて見えたが、二十に剣が分かれていた。


「嘘だろ!? ありえない!」


 エミリアでも十八だった。この男は創聖魔法の強化なしでそれを越えるというのか!


 俺のミーティアスラストと男のミーティアスラストが激突する。

 すると威力は互角で押し負けることはなかったが、十五の突きが撃ち終えた後、残り五つの攻撃が俺に迫る。


「くっ! 食らってたまるか!」


 一、二、三⋯⋯向かってきた三つの突きは身を捻りかわすことに成功した。

 しかし三つの突きをかわした時に体勢を崩してしまったため、これ以上は⋯⋯


「うぐっ!」


 男の剣が俺の左肩と右太腿に突き刺さり、俺は思わず声を上げてしまう。

 だがダメージは最小限に抑えられた。回復魔法を使って一度仕切り直すぞ。


「まだ終わってねえよ」

「何!?」


 俺は一度この場を離れようとしたが、男はさらに追撃してきた。


「吹き飛べクズ野郎!」


 男は俺の腹部目掛けて蹴りを放った。

 ダメだ! 避けられない!


「ぐふっ!」


 そして俺は男の蹴りをもろに食らい、後方へと吹き飛ばされる。

 胃の中の物を全て吐き出しそうなくらい激痛が走る。だけどこれで二人との距離が空いた。

 今のうちに回復魔法を⋯⋯


「だからまだ終わってねえよ」


 俺は男の声で顔を上げ周囲の様子を見ると、もう一人の男が魔力を集め魔法を放とうとしていた。


「これで終わりです。クラス8暴風雨稲妻魔法テンペスト

「ク、クラス8だと⋯⋯」


 そこまで上位の魔法を使える人など見たことがないぞ!

 だが今は驚いている場合じゃない。

 稲妻を伴った嵐がこちらに向かってきている。

 この魔法を受けたら確実に死ぬだろう。


「ク、クラス2風盾ウインドシールド創聖魔法ジェネシス


 蹴りを食らった影響でまだ言葉を発するのはきついが、俺はシャボン玉のように360度包み込む、風の盾を展開することに成功した。


 そして風の盾と稲妻を伴った嵐が激突する。


「くっ!」


 だが相手の攻撃の方が威力が高く、徐々に風の盾を削られていく。

 そして終いには風の盾は砕けちり、俺は相手の魔法食らってしまうのだった。

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