第203話 ドルドランドの長い夜(11)
俺は地中から何かを破壊する音が聞こえたので、反射的に頭を反らす。
すると先程まで頭があった場所に何かが通り過ぎた。
「これは水!? ウォーターカッターか!」
どうやらキングクラブは、地上に出ると俺の反撃を食らうので、地中から攻撃する方法に切り替えたようだ。
聴覚強化でウォーターカッターの初動の音を聞いていなかったら、命を奪われていたな。
それにしても厄介なことをしてくれる。
こちらからは攻撃出来ないし、キングクラブは先程から絶え間なくウォーターカッターを放ってくる。
攻撃手段はわかっているのでかわすのはわけないが、さっきからウォーターカッターの地中を破壊する音が騒がしくてしょうがない。
音がする度に耳が聞こえすぎて、頭痛がする。
このままだと精神的にこちらが参ってしまいそうだ。
だけど聴覚強化をやめてしまったら、ウォーターカッターをかわすことが
難しくなる。
どうする?
だが考えている最中にも、ウォーターカッターが休みなく襲ってくる。
無理だ。今は聴覚強化を使って、キングクラブの攻撃を堪えるしかない。
それにしても頭が痛い。
このままキングクラブがウォーターカッターを出せなくなるか、俺が頭痛を堪えるか我慢比べだな。
そして俺は何発ものウォーターカッターをかわすが、キングクラブの攻撃は的確だ。
どこに移動しようと必ず俺がいる場所を狙ってくる。
探知スキルで俺のことを見ているんじゃないかと疑うレベルだ。
まあ実際は聴覚強化+で俺の居場所を探っているんだろうが、俺の聴覚強化ではキングクラブの居場所まではわからない。それだけキングクラブの聴覚強化の方が優れているということだろう。
ん? キングクラブの聴覚強化の方が優れている?
それなら俺と同じ様に頭痛に悩まされているかもしれない。
もし大きな音でもなれば⋯⋯
これはやってみる価値がありそうだな。
俺は急ぎ創聖魔法で新たな魔法を造る。
まだまだMPは残っているので、おそらくMP切れにはならないはず。
俺は魔力を込めるとクラス4として新魔法を造ることができた。
後は俺の聴覚強化をオフにして⋯⋯
そして俺は新しく作った魔法を解き放った後、すぐに自分の耳を塞ぐ。
「クラス4・
すると周囲いったいからけたたましい爆弾音が鳴り響いた。
「くっ! 耳を塞いでも頭が痛くなる」
これでもし耳を塞がず聴覚強化を使っていたら、おそらくショックで死んでいたかもしれない。
だけどそれはキングクラブも同じだった。
キングクラブは、地中から一本釣りで釣り上げられた魚のように空高く舞い、地面に落ちる。
そしてひっくり返って腹を見せた状態でピクピクと震えていた。
やはり
これで後はとどめを刺すだけだ。早く倒さないとキングクラブが復活するかもしれない。
俺はカゼナギの剣を腹の底の部分、前かけを狙って剣を突き刺す。
すると剣はあっさりとキングクラブの身体に刺さった。
カニを食べる時、前かけの部分に力を入れて甲羅を外すから試しに刺してみたが、どうやら弱点の部位だったようだな。
そして俺の攻撃はまだ終わらない。
キングクラブからバックステップで距離を取ると同時に、右手に魔力を込める。
「クラス6・
魔法を解き放つと、荒々しい稲妻がカゼナギの剣に落ちた。
これで剣を通じて身体の内部までダメージを負ったはず。さすがにただではすまないだろう。
そして稲妻が落ちたことで発生した煙が晴れると、そこには俺の予想通り、稲妻を食らってピクリとも動かないキングクラブの姿が見えた。
こうして俺は、突如現れた魔王化した魔物をなんとか仕留めることができ、ドルドランドの街を守ることに成功するのであった。
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