幸せな暮らし

その日から僕は碧のアパートで一緒に住むことになった。碧は僕の所よりも高そうなアパートに住んでいて、部屋も多くて広いのにあまり物が置かれていない。シンプルというよりはさびしげな部屋だ。碧らしいと言えば碧らしい。


碧と一緒に暮らし始めたからといって、僕は今まで通りの生活を送ることは出来なかった。散歩がてら試しに外に出てみたところ、ご近所さんらしき人を見た瞬間激しい吐き気に襲われて急いで部屋に逃げ帰った。碧以外の人とはまだ会うことは出来ないようだ。食事もする気にならないし、眠ろうとすれば悪夢を見てパニックになり自傷行為をしてしまう。壁に叩きつけた頭からは血が出て体は痣だらけ、でも碧はそんな僕を面倒くさがらずに甲斐甲斐しく世話を焼き始めた。学校を休んでまでして僕のそばに居たり、お粥を作ってくれたりする。悪夢を見て暴れる僕を押さえつけて、落ち着くまで抱きしめてくれる。今までのように僕に暴力を振るうことなく優しくしてくれる碧に、僕はすっかり依存していた。




だから、あの時僕は自分を止められなかった。

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