埋められたそれは真か嘘か

僕は一人暮らしをしている。両親と仲が良くなくて、少し遠くの高校に通うからという口実の元、小さな安いアパートを借りたのだ。夜遅くまで起きていても、少し部屋を散らかしても怒る人はいない。そんな小さな僕の城と化していた部屋だが、ここ最近邪魔者が入ってくる。


「やぁ」


ピンポーンとインターホンが押され、勝手に部屋に入ってくる。家主の許可を取ることなく入ってくるなんて図々しい。まあいつものことなので、気にしてたらやってられない。それにしても、よくいじめてる相手の家に呑気に顔を出せるものだ。来ることを想定して、部屋の鍵を開けておく僕も僕だが。


「お前、暇なのか?」


「別に?独りぼっちの翔がさびしくないように来てやってるのさ。」


一体誰のせいだと思ってるんだ。偉そうに言うこいつの顔面に1発入れてやりたいが、仕返しがこわいのでグッと堪える。昔から人見知りで口下手な僕は友達がいない。しかも碧のせいで常に傷だらけだからか、余計クラスメイトも先生ですら僕には話しかけにはこないのだ。ちなみに碧は僕の真逆で、頭も顔も良いうえに性格を取り繕うのも上手いのでクラスでは人気者だ。


「相変わらず君の部屋は小汚いな。掃除したらどうだ?」


奴は少し顔を顰めながらリビングに入って来ると、ドカリとソファーに座った。


「文句があるなら来るなよ…」


「それはそれで、さびしいくせに」


はっとなり僕はとっさに碧の顔を見てしまった。奴はニヤニヤ楽しそうにこちらを見ている。僕の顔がかぁっと熱くなり、林檎のように赤くなっていく。


「う、うるさい!」


もしかしたら碧にこの気持ちがバレているのかもしれない。だが隠し事が上手い碧の真意なんて僕の沸騰した頭では分からなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る