歯磨きしたら血が出ました。まるであなたのようですね。

吐瀉丸

無理やり赤く染められて

僕は碧が嫌いだ。碧は僕のことを幼い頃から高校に上がった今になるまでずっといじめてくる。ふとした時に、殴ったり蹴ったり様々だ。軽くおふざけ程度の時もあれば、脳が揺れるほど強く頬を殴られたり、転んでしまうくらい強く蹴られる時もある。鈍臭くて意気地無しな僕はそれを避けることも、やり返すこともできずにそれを受け止めるしかない。どうしてそんなことをするのか聞いても笑ってはぐらかされてしまって腹立たしい。今だってそうだ。なんでこんなことするんだ?と聞けば、爽やかな笑顔と共に、頬の擦り傷に脱脂綿をグリグリと押し付けられた。今僕は絶賛、碧のせいでした怪我を碧自身に手当されている。こいつは殴られて僕が怪我をするたびにいつも手当てをしてくるのだ。楽しそうに、一つ一つ丁寧に消毒をして絆創膏を貼り、痣をそっと撫でてくる。今だって、機嫌良さげに鼻歌を歌いながら脱脂綿で僕の頬の傷を消毒している。傷をつけてきたのはこいつなのに、なんでそんなことをするのか分からなくて、気持ち悪くて、僕は手当された傷を掻きむしりたくなった。

ふと碧の手が目に入った。病的な程白いその手には、手当の最中についたのか僕のものらしき血がついている。その白と赤のコントラストが妙にいやらしいものに見えてしまって、僕は思いっきり目を逸らした。こんな風に感じてしまう気持ちの答えが、僕が先生や他の人にこれを相談しない理由だろう。傷の痛みのせいか、こんな気持ちが情けないからか、涙が込み上げてきてしまって鼻をすすった。泣き虫みたいなのが嫌で、それを隠すように僕は全部こいつのせいにした。


「お前のせいだ」


「ん?なんのことかな?」


分かっているのかいないのか、碧は楽しそうに口の端を釣りあげていやらしく笑った。


僕はこいつが嫌いだ。

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