姉のことが好きすぎて婚姻届けをもってきちゃう系妹

でずな

おかしい妹



 私の妹は少しおかしい。おかしいことに気づいたのは、妹が私のタンスの中を漁っていたのを見てしまったから。あの時は「間違えて私の服がここに入ってるかも〜」とか言って誤魔化してたけど、それが何回もあったのでどこかおかしい。


 そんなおかしい妹は今、私の目の前に一枚の紙を差し出してきている。


「なにこれ?」


「私とお姉ちゃんが永遠の愛を誓うための紙!」


「いや、これが婚姻届けだって言うのはわかるんだけどさ。なんでそんなの私に渡そうとするの?」


「好きだから。それ以外にこの紙を渡す理由はないっ!」


「いやいやいや。それもわかるんだけど、第一私達姉妹だし、それに同性だし、それに別に私は好きじゃないから、婚姻届けなんて書かないよ?」


「両思いだと思ってたのに……」


「えぇ?」


 何故か私が悪い雰囲気になってしまった。

 あの一件から妹が私の後ろをついてくるようなことはなくなった。


 時は過ぎ、私は大学生に。一人暮らしをすることになった。家を出たとき、妹が顔を見せてくれなかったのでちょっとさみしい。


 あの時、婚姻届けを書いたほうがよかったのかな?

 いやそんなことはない。だって好きじゃない。ましてや妹と結婚だなんて……。そもそも書いたところで結婚なんてできないし。


 頭にもやもやを抱えながら、新居のドアを開けると……。


「あっ! お姉ちゃん!」


 そこにはエプロン姿の妹がいた。


「で、ここは私の一人暮らしようの家なんだけど、なんでここにいるの?」


「それはもちろんお姉ちゃんと一緒にいるため!」


「そ、そう。もう一つすごく気になるんだけど、なんでここに私以外の荷物があるのか知ってる?」


「あぁ〜。それ、私の」


「?」


「あれ? 聞いてなかったの? お母さんたち、もうすぐで海外出張にいくんだよ?」


「本当?」


「もちろん! 私がお姉ちゃんに嘘をついたことなんてないでしょ?」


「うん。まぁうん。一応確認してみる」

 

 どうやら本当にお母さんたちは海外に行ってしまうらしい。そして残った妹は、姉である私が面倒を見ることになるっぽい。


「ね? ね? やっぱり私は、ひとつ屋根の下でお姉ちゃんとイチャイチャするんでしょ?」


「イチャイチャなんてしないからね」


 言動からして、家事の分担より私自身の身体のほうが危なそう。


 私と妹が二人のはずなのに、何故か上手くいってる。お互い料理など、小さい頃からお母さんに叩き込められた家事スキルが唯一の救いだった。

 

 今では私からしたら危険人物であった妹と、今隣同士に座って映画を見る仲。

 いきなり婚姻届けだったり、変なことを言ったり、おかしいところはあるけどこの娘が誰よりもいい娘だっていうのは、姉である私がよく知ってる。


「わぁー怖いよおねえちゃーん。早くお姉ちゃんの体に抱きつかないと、怖くて死にそうー」 


「抱きつきたいのなら、もっとちゃんと頼み込めばいいのに」


「むふ。今だめって言わなかったね!」


「ちょ……もぉ」


 妹の距離感が、前より明らかに近くなってる。まぁけど、別に嫌じゃないしそのままでいっか。


 放置するべきじゃなかったかもしれない。難癖をつけ、抱きつく程度だった妹はどんどん遠慮がなくなり、今では同じ布団の中で寝ている。


 拒まない私が悪いっちゃ悪いけど、嫌じゃないし……。好きかって言われたらそうかもしれないし……。自分でも、妹への気持ちがよくわからない。


「好きなのかな」


「だ、だ、だ、誰のことを!?」


「あっ。起きてたんだ……」


「そりゃあお姉ちゃんが寝てないのに、私が寝るわけないでしょ。それより誰が好きなの?」


「あなた」


「お〜! ようやく私達が両思いになるときが……」


「いやまだ両思いじゃないからね。あなたに対して、自分でもよくわからない感情があるから、それがもしかしたら好きっていう気持ちなんじゃないかって思っただけで……」


「むふふ。じゃあ今度一緒に遊びに行こ! もちろん恋人として。そしたら私のことが好きなのかわかるでしょ?」


「まぁ……じゃあそうしよっかな」


 恋人として手を繋いだりしながら、妹と遊ぶのは今までで一番楽しくて、ドキドキしていた。妹といるとなるこのドキドキ。これが好きという気持ちなら素直に受け止める覚悟。


 一応第三者の意見を聞いたほうがいいと思い、高校で知り合った親友というほど仲がいい友達に妹だということを隠してドキドキのことを話すと、それは恋だと声高らかに断言してきた。


 姉妹で……。

 同性で……。

 

 ちょっと前までは考えられないことだったけど、私は妹に恋をしてしまったらしい。


「ねぇ、お姉ちゃん。一緒にお風呂は入ろ?」


「う、うん」


 恋をしている人と裸で一緒にお風呂。

 果たして私は正気でいられるのだろうか?

 この気持ちが爆発して襲うことがあったら……。妹なら喜んで受け入れそうだ。うん。ならそんな心配することないな。

 

 この後、お風呂から上がった私達は案の定のぼせてしまった。

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姉のことが好きすぎて婚姻届けをもってきちゃう系妹 でずな @Dezuna

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