第14話 電気屋で。
他愛のない話を続けていると、無駄に大きな建物が見えてきた。
今日が休日ということもあってか、外は子供連れの母親だけでなく、顎を指で摘んだような格好をしている人たちが結構いた。
大抵そういう格好をしてる人たちは何も考えていないのだろう。結局ネットで値段を見てさっさと帰るのだ。
とは言うものの、俺もその一人である。ガラスフィルムやスマホケース、ワイヤレスイヤホン、パソコン。俺は先の男性たちと同じようなポーズをとって眺めている。
「このパソコン、メモリ4ギガのCeleron N4020搭載で12万……これを買う人がいるのか……情弱乙とはこういうことだね。」
だが、もちろん例外も存在する。
例えば、俺の隣でよく分からないことを言っている美少女探偵。俺には全くもってサッパリだが、国内生産の安心感もあるだろう。
それは言わば、安全の値段だ。
と、口から出そうだったのを咄嗟に飲み込んだ。面倒臭い口論が始める予感がしていたからだ。
「ちなみに未玖のパソコンは20万で私が組んだもの。大体の作業は軽々こなせるよ。」
「聞いてません。」
あのパソコンを組んだのは姉だと未玖から聞いたことがあるし、パソコンにあまり興味がない俺にとっては20万のパソコンの平均スペックがどんなものなのかは全然わからない。
しかしまぁ、これから大学生になってパソコンが必要な人はしっかり調べてから購入しようということだな。
それから俺は、妙に涼しい電気屋の冷房で体を冷ましながら未玖を探した。
パソコンのグリスがどうこうと言っていたので、パソコンパーツのコーナーにいると思うが……。
「お、いた。」
なにやら2つの商品を吟味しているようだが、グリスにそんな違いがあるのか。
「そのグリスってやつは物によって違うのか?」
「当たり前。高ければ高いほうが良い訳じゃないけど、CPUがよく冷えるのには色々と条件があるの。」
「ん~俺にはサッパリだな。」
そういえば、俺の親父もこういうのに詳しかった。
俺がスマホが欲しいと言ったときは、やれ性能がどうだのコスパがどうだのと早口に喋っていた。
俺の中で、親父や母親、中学の友達なんかがまるで死んだ人間を思い出すように記憶に蘇ってきた。
「もうこれ、正直どっちでも良いから涼太が決めて。」
「どっちでもいいなら自分でも決めれるだろ。神様の言う通りって。」
「それ、最初にどっちから始めるかで分かるから意味ないじゃん。」
「じゃあ、これ。」
正論で返された俺は、俺から見て右側を右手で指す。理由は単純、右手で指すなら右のほうが近いから。
「涼太は何も買わないの?」
「まぁ電気屋で買うものは無いしな。」
「分かった。じゃあ私、会計してくる。」
「俺も着いていくか?」
「いい。これ戻しといて。」
俺は選ばれなかった商品を未玖から受け取り、もとにあったであろう場所に戻す。
隣を見ると、また同じような商品が並んでいる。
全て同じように見えるが、値段はバラバラ。300円くらいのやつもあれば、千円するやつもあった。
全部同じに見えて、全部違う。
「なんか深いな。グリス。」
その後、なにやら大きめ袋を持った絢香と合流し、フードコートでご飯を食べることになった。
「絢香は何買ったんだ?」
「タブレット。」
「それ、世界的に有名なやつじゃん。」
機械に詳しくない俺でも知っている有名りんごメーカーのタブレット。
しかし、最近のタブレット端末はえらく大きいな。見せてもらった箱は、両手の手のひらくらいあった。
「お姉ちゃん、それもしかしてプロ?」
「うん。」
「いくらしたの?」
「……12万。」
思ったんだがこの姉妹、どっからそんな金湧いてくるんだ?
自称美少女探偵による『寝取り復讐』のカテイ 楠 楓 @kadoka0929
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