第37話 会長からのプレゼント

 朱音と二人で会長の部屋にいるのだが、椅子に座っている会長のスカートが床に座っている僕の視線の高さになっているのでスカートの中が見えそうになっているのだ。いつもの制服よりも少し短いスカートなので中が見えそうなのだが、会長が少し動いたくらいでは中も見えずにいた。

 日常的にとはいかないまでも、オカ研の活動日にはほぼ見えている会長のパンツが見えそうで見えない状況化にあるという事で、僕はいつの間にか会長のパンツが見えないことにストレスを感じてしまっていたのだ。

 オカ研に入った時はこんな事を考えることなんて無かったのだけれど、いつからか僕は誰かのパンツを見れないとストレスが溜まってしまうようになっていたのかもしれない。さすがに知らない人のパンツを見ようと努力することは無いのだけれど、今みたいに知り合いのパンツが見えそうな状況の時には自然と見えるように態勢を変えたりしているのだった。ただ、いつもパンツを丸出しで生活している妹の朱音の場合は見えていてもなんとも思わないのだけれどね。

「お兄ちゃんどうしたの。さっきから落ち着き無いよ。もしかして、会長さんの部屋に来てるって事で緊張してるの?」

「別に緊張なんてしてないけど。朱音の方が緊張してるんじゃないのか?」

「そりゃ緊張するよ。お兄ちゃんも一緒に来るとは思ってなかったしさ」

「僕は朱音と一緒に呼ばれてたんだけど、会長は朱音には僕と一緒だって言わなかったんですか?」

「うん、朱音ちゃんには私の着ていた服をあげるとしか言ってなかったからね。どんな服が好みかわからないから選んでもらおうと思って朱音ちゃんを呼んだんだけど、朱音ちゃんの好みに合うような服は見つかったかな?」

「見つかったかなって言われましても、どれを見ても可愛くていいなって思いますよ。でも、会長さんはスタイルが良いから朱音が着ても似合うかどうか心配なんですよ」

「心配なら着てみるといいよ。気になったのは片っ端から着て確かめていいからね。私も来年から大学に進学する予定だし、そう言った服はもう着れないと思うからね。多少無理すれば着れるかもしれないんだけどさ、年相応の服装ってものもあるから困ったもんだよ」

「でも、会長さんだったら着ても違和感ないような服もあると思いますけど」

「そうなんだけどね、ちょっと胸のところが苦しくなっちゃうんだよ。いろんな意味でね」

 制服姿ではわかりにくいのだけれど、会長の胸は一緒に観覧車に乗った時よりも大きくなっているような気がしていた。アレからも私服姿を見ることは何度かあったのだけれど、こうして服の話を聞いているといつもよりも会長の体の事に目が行ってしまうのだ。

 特に、今みたいにウエストを絞っている服をいつも以上に胸が強調されているので僕は目のやり場に困ってしまっていた。それで視線が自然と下の方へと下がっているのだけれど、そうなるとスカートの中がどうなっているのか気になってしまっているのだ。

「お兄ちゃんはさ、朱音にどんな服が似合うと思うかな?」

「そうだな。ちゃんと着るんだったら何でもいいんじゃないかな」

「ちょっとお兄ちゃん。真剣に答えてよね。朱音はこんなにたくさんあったら選べないんだからさ」

「あはは、君たち兄妹は本当に仲が良いんだね。まー君も朱音ちゃんもお互いに好きだって気持ちが伝わってくるよ。やっぱり、兄妹って言うのはそう言うもんなんだろうな。羨ましいよ」

「まあ、朱音はお兄ちゃんの事が好きですけどね。でも、会長さんもお兄ちゃんの事を好きですよね。見てたらわかりますもん」

「そうだな。私もまー君の事は好きだよ。でも、その好きは朱音ちゃんが抱いている好きって気持ちとも違うだろうし、愛ちゃんが抱いている好きって気持ちとも違うんだろうな。私も陽菜ちゃんも真美ちゃんもまー君の事は好きなんだけど、どちらかと言えば恋人になりたい好きってよりはアイドルとか芸能人を好きになるって気持ちに近いのかもね」

「難しい話ですね。でも、朱音も会長さんもみんなも愛さんに負けないくらいお兄ちゃんを好きなんだと思いますよ。それにしても、どの服も可愛いから迷っちゃいますよ」

「気になる服は片っ端から来てみるといいよ。クローゼットの中でも着替えるくらいのスペースはあると思うし、まー君も妹の着替えを覗いたりしないだろうからね」

「朱音の着替えなんて覗きませんよ。覗いたところで何とも思いませんし」

 僕は今日だって朱音がパンツ丸出しのまま行動しているのを見ていたのだ。今更着替えているところを見たところで何とも思わないというのも事実なのだが、朱音の中ではパンツを出して生活するのは平気でも着替えを覗かれるのは嫌だという思いがあるようなのだ。その違いが僕にはわからないのだが、朱音にとって着替えとは見られたくないものだという事だけは認識しているのである。もしかして、朱音はパンツを見られるのは平気でもブラを見られるのが嫌なのだろうか。そう考えると、色々と思い当たることはあるのだ。

「それにしても、朱音ちゃんはやっぱり可愛いな。まー君の妹だという事を抜きにしても可愛いと思うよ。性格も明るいし社交性もあるし、後一年早く生まれていて陽菜ちゃんと同じ学年だったら一緒にオカ研で活動出来ていたのかもしれないしな。そうなったら今とは違うオカ研になっていたのかもしれないね」

「そうですね。でも、朱音はオカ研には行っても陽菜ちゃんみたいにあんまり活動に参加しないと思いますよ。あいつは体を動かすのが好きだら運動部とかと掛け持ちになると思いますし、友達と一緒に薙刀部とか作っちゃうと思いますよ」

「朱音ちゃんが薙刀をやっているというのは聞いていたけど、うちの学校に薙刀部なんてあったかな。似たような部活はあったと思うけど、今は活動してないと思うよ」

「そうらしいんですけど、朱音はうちの学校に入学して新しく薙刀部を作るか再開させたいって言ってますからね。愛ちゃんとか真美ちゃんにも声をかけてるみたいですし、陽菜ちゃんはオカ研と掛け持ちで参加するって言ってくれたみたいです」

「となると、来年のオカ研はまー君一人になる時間が多そうだね。こっそり遊びに行っちゃおうかな」

「会長がきてくれるのは嬉しいですよ。やっぱり、僕は会長と過ごしてるあの時間が好きですからね」

「ふふふ、まー君は私の言って欲しいことを言ってくれる良い子だね。そうだ、朱音ちゃんだけにプレゼントをするのも良くないと思うし、まー君にも何かあげないとね」

「別に僕はいいですよ。朱音に服をくれるだけで良いですから」

「まあまあ、そんなこと言わずにさ、私の気持ちを受け取ってほしいな。それと、アイドルや芸能人を好きって言ってもさ、高嶺の花だからって諦めるだけじゃなくて振り向いてもらうためにプレゼントしたり会いに行ったりも出来たりするでしょ。だから、本質的には好きって気持ちに違いなんてないんだよ。それにさ、まー君が気にしてることを確認させてあげてもいいんだよ。ほら、今なら朱音ちゃんもいないしさ」

 会長はスカートの中が見えない絶妙な高さで足を組み替えていたのだが、僕の目線の高さでは少しだけ浮いているお尻が見えていて、そこには白地に紺色の水玉が見えているような気がしていた。

 本当に水玉パンツを履いているのかは自信がないのだが、僕の位置から見えるのはそれなので疑いようもないのである。ただ、今日みたいに大人っぽい服装の会長が大人っぽいセクシーなパンツではないのかと思うと若干の違和感もあったのだ。制服の時は紐だったり面積の少ないパンツを見せてくれているのに、今日みたいに大人っぽい服の時に子供っぽいパンツというのは本当にギャップしか感じないのだ。

「どうしたのかな。少しだけ見えていると、全体がどうなってるのか気になっちゃうのかな?」

「べ、別にそんな事ないですけど」

「そうなんだ。ちゃんと言わないと朱音ちゃんが出て来ちゃうかもしれないよ。私はそれでもいいんだけど、まー君は違うんじゃないかな?」

 会長は僕の気持ちを見透かすように足を何度も組み直しているのだが、会長が僕の目をじっと見ていることもあってスカートの中を見ることがはばかられていた。会長は僕がスカートの中を見ている瞬間を見たいのだと理解しているのだが、ここまでじっと見つめられると良くない事のように思えてみることが出来なかった。

「まー君は本当に恥ずかしがり屋だね。もっと積極的になってくれてもいいのにな。そうすれば、私だって少しくらい平気なんだけど」

 会長が椅子から立ち上がるとクローゼットの方へと歩いていった。朱音に服の着心地を聞いているようなのだが、朱音は上手く着ることが出来ないとのことで会長が手伝うことになった。

「この服は別に全部結ばなくても大丈夫だよ。背中と肩だけを縛るだけでも可愛いからね。朱音ちゃんみたいに可愛い子が着ると私が着た時と印象変わるんだね。それにしても、朱音ちゃんも意外と立派なものをお持ちなんだね」

「そんな事ないですよ。会長さんの半分も無いと思いますし」

「私が中学生の時よりも朱音ちゃんの方が大きいかもしれないよ。これからどんどん成長しちゃうかもね。ほら、こんな感じで良いと思うよ」

「ありがとうございます。お兄ちゃんに見てもらおうっと。ねえ、どうかな?」

 クローゼットから出てきた朱音はいつもと違って肌が多めに見えている服を着ていた。片や二の腕やお腹が一部見えているのだが、運動をしている朱音が着ていると色気よりも健康的に見えてしまっていた。たぶん、これを朱音の友達が着ていたら受ける印象は違っているのだと思うのだけれど、僕にはこんなセクシーな服を着ていても朱音には色気よりも健康的だという印象しかなかったのだ。

「ねえ、感想は何もないのかな?」

「そうだな。強いて言うのなら、健康的でいいと思うぞ」

「健康的って、変な感想。私的には会長さんの持ってる服の中で着れそうなので一番セクシーなやつを選んだんだけど、健康的って感想は新しすぎるでしょ」

「まあ、そんなもんだよ。あんまり深く考えるなって」

「そっか、でも、さすがにコレだけ肌が見えてる服は外じゃ着れないね。どこに着ていけばいいのかもわからないし」

「デートの時に着てみたらいいんじゃないかな。私は結局一回も着た事なかったけど」

 会長の言葉を聞いて僕も朱音も固まってしまったのだが、会長自体は言った事を気にしていない様子なので少しだけほっとしていた。自虐ネタなのかわかりにくかったけれど、僕も朱音もデートの時に着たことが無いという言葉を聞かなかったことにしたのだ。

「お兄ちゃんはさ、朱音が頑張ってこの服を着て横にいたらどう思う?」

「どう思うって、別にどうも思わないんじゃないかな。いつもとそんなに」

「お兄ちゃん!!」

 朱音は僕の言葉を遮ってきた。いつもとそんなに変わらないというのはあっていると思うのだが、会長にそう思われたくないという気持ちはあるのだな。僕は優しいお兄ちゃんなので朱音の気持ちを汲み取ってあげるのだ。

「さすがにコレは着れないから他のにしてみようかな。会長さんに選んでもらってもいいですか?」

「良いわよ。でも、ここにあるのは好きなだけ持っていってくれていいからね。一回で持っていけなかったら、まー君に取りに来てもらってもいいからね」

「はーい、どれも素敵だから選びきれないかもしれないです。その時は、お兄ちゃんにお願いしちゃおうかな」

「おいおい、うちにそんなにたくさん服をしまう場所なんて無いだろ」

「そうだった。ちゃんと選ばないと」

「別に朱音ちゃんが着ないのでも持っていってお友達にプレゼントしても良いのよ。服も誰かに着てもらった方が嬉しいと思うしね」

「良いんですか?」

「良いのよ。ここにあるのは多分もう着ないからね。朱音ちゃんのお友達が嫌じゃなかったら好きなだけどうぞ」

「ありがとうございます。友達も喜ぶと思いますよ。次はこの可愛いワンピースを着てみようかな」


 その後も朱音のファッションショーは夕方まで開催されていた。この日は朱音が気に入った服を貰って帰ることになったのだが、朱音が悩んで選んだ服だけでも相当な量になってしまった。

 後半は朱音の服を見ている時間よりも朱音の後ろでスカートをめくっている会長の方にばかり視線がいってしまっていた。椅子に座っていた時に見えていた紺色の水玉模様のパンツだったのだが、大人っぽい服装にミスマッチで違和感が凄かったのに、僕は会長の水玉パンツから目が離せなくなってしまっていた。

 ひょっとして、会長は外と内でギャップを楽しむタイプの人なのだろうか。それがわかるのはもう少し先の話になるのであった。

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