朱音とお姉ちゃんたち

第36話 朱音が貰ったプレゼント

「お兄ちゃんってさ、オッパイよりもお尻の方が好きなの?」

「お前は突然何を言い出しているんだ。頭でもおかしくなったのか?」

「いや、そうじゃなくてさ。純粋に気になったから聞いてみただけだよ。だって、お兄ちゃんと仲の良い女の子ってみんなオッパイが大きいじゃない。でも、お兄ちゃんがの彼女の愛さんはオッパイが小さいからさ、お兄ちゃんってオッパイに興味ないのかなって思ってて」

「お前は失礼なやつだな。今の話を愛ちゃんにしてもいいんだぞ」

「それは別に言っても大丈夫だよ。だって、愛さんから相談されたんだもん。なんでみんな大きいのに自分だけ成長しないんだろうって。もしかしたら、お兄ちゃんがそう言う呪いでもかけてるんじゃないかって思ってるみたいだよ」

「そんなこと出来るわけないだろ。それに、愛ちゃんの胸が大きくないのは僕のせいじゃないし」

「そりゃそうだよね。お兄ちゃんとずっと一緒にいる朱音はちゃんと成長しているもんね。お兄ちゃんは気付いてないかもしれないけどさ、朱音はクラスでも一番大きいんだよ。ほれほれ、見てごらん」

 朱音は僕を挑発するように両手で自分の胸を下から支えるように持つとゆさゆさと揺らしていた。今まで全く意識していなかったのだが、朱音の胸はちゅがく性とは思えないくらい成長していたようだ。

 普段はゆったり目のシャツだったりパジャマを着ているので気付かなかったという事もあるのだけれど、それ以前に下はいつもパンツ丸出しなのでそちらの方に気を取られていたという事もあるのだろう。何より、自分の妹をそういう目で見ていなかったのだ。

 いや、もしかしたら気付いていたのかもしれないのだが、僕と仲の良い女子はみんな胸が朱音よりも大きいので朱音のサイズでも普通だと思い込んでいたのかもしれない。

「もう、お兄ちゃんたら反応薄いな。そんなんだから愛さんも不安に思っちゃうんだよ。お尻ばっかり見てないでもっと他の所を見てあげなよ」

「別にお尻ばっかり見てるわけでもないし。お前はお前で下になんか履けよ」

「残念でした。朱音はちゃんとパンツ履いてます。ちなみに、今日履いているのは陽菜ちゃんから貰ったうさちゃんパンツだよ。どう、このパンツも可愛いでしょ。近くで見てもいいんだよ」

「見るわけないだろ。お前は本当に女なのかよ。もっと恥じらいってものを身に着けた方がいいんじゃないか」

「別に朱音は恥じらいが無いわけじゃないよ。制服の時はパンツが見えないように気を付けているしさ、こうやって見せてるのはお兄ちゃんだけだし」

「別に俺にも見せなくていいだろ。それに、買い物についてこいって言ってるのにそんな恰好で出かける気か?」

「そんなわけないでしょ。でも、どの服がいいか迷ってるんだよ。お兄ちゃんの好みにしようかな。ね、どれがいいかお兄ちゃんが選んでよ」

「自分の服くらい自分で選べよ。どれを着てもそんなに変わらないだろ」

「そんな事ないもん。朱音は服装でイメージ変わるねってよく言われてるし」

「それってさ、普段の制服と薙刀の試合の時の印象だろ。普段着の話をしろよ」

 確かに、制服を着ている朱音と今のようにリラックスしている朱音に抱く印象はまるっきり異なるのだ。なんでもそつなくこなしてしまう印象のある制服姿に比べて、下はパンツ一丁という格好の朱音からはだらしないという印象しか受けない。さすがに家族以外の誰かがいる時はちゃんと何かを履いてはいるのだけれど、今みたいに家の中に僕しかいない状況では緩み切っているとしか思えないのだ。

「じゃあさ、会長さんみたいな清楚な感じがいいか真美さんみたいにフリフリの可愛い系がいいか陽菜ちゃんみたいにギャルっぽいのがいいか選んでよ」

「なんでその三人なんだよ。そんな感じだったこと一回もないだろ」

「それはそうなんだけどさ、肝試しの後にいっぱい服を貰っちゃったからどれか着たいなって思ったんだよ。朱音ってお兄ちゃんのジャージしかお下がりでもらったことが無かったからさ、お洋服をたくさんもらえたのって嬉しいんだよね。お姉ちゃんがいっぱいで来たみたいで嬉しかったんだ」

「あれ、愛ちゃんも一緒だったと思うけど、愛ちゃんは何もくれなかったの?」

「愛さんもくれたんだけどさ、朱音にはちょっとサイズが小さかったんだ。ほら、愛さんってスレンダーだから朱音にはきつくてさ。その時にお兄ちゃんの事も相談されたんだけど、朱音はお兄ちゃんがオッパイ星人だって思ってないから大丈夫だよって言っておいたんだよ。でも、愛さんはちょっと寂しそうにしてたんだよ。お兄ちゃんからもオッパイが重要ではないって事を伝えた方が良いと思うな」

 たぶん、愛ちゃんが寂しそうにしていたのはオッパイがどうこうではなく、自分の服だけ朱音が着れなかったという事だろう。確かに愛ちゃんはスレンダーで線も細い。その割にはちゃんとお尻も大きくて触り心地もよさそうに見える。

 でも、中学生の朱音の方が発育が良いとしたら、やっぱり色々と思うところがあるんだろうな。

「別に伝える必要もないだろ。僕は別に胸が好きなわけじゃないから」

「そう言うのは私じゃなくて愛さんに言ってよ。それにさ、胸が好きじゃないって言ったら朱音とかみんなの価値が下がっちゃうみたいじゃない。今度陽菜ちゃんと一緒にお兄ちゃんの前で胸を揺らすダンスをしようって言ってたのにさ、興味無いならソレも中止にしちゃおうかな」

「それは中止で良いと思うぞ。別に見ても何も思わないと思うし」

「じゃあ、胸じゃなくてお尻にするね。それならお兄ちゃんも喜ぶと思うし。何を着ようか迷っちゃうな。お兄ちゃんは本当にどれでもいいと思う?」

「ああ、好きなのを着るといいよ。俺も適当に選んで着替えてくるから」

 お菓子の材料を買いに近所のスーパーに行くだけなのでオシャレをする必要なんて無いと思うのだが、みんなから服を貰えたのがよほどうれしかったのか朱音は嬉しそうに階段を上っていた。じっくり見たことが無かったので知らなかったのだが、意外と朱音のお尻も大きくて綺麗な形をしているな。

 階段を上るたびに朱音のお尻が揺れているのだけれど、それに合わせてウサギも上下に揺れていて少しだけ可愛らしく見えた。

「あ、お兄ちゃんは朱音のお尻をずっと見てたでしょ。うさちゃんが可愛いからってお尻ばっかり見るのはエッチだと思うよ」

「そう思うなら誰もいなくてもズボンくらい履けよ」

 僕は当然のことを言ったまでだ。いくら家族とはいえズボンくらい履くのがマナーってものだろう。

「でも、ズボンの締め付けとか好きじゃないんだよ。スカートも意外と締め付けあるし、お兄ちゃんのハーフパンツなら履いてあげてもいいけど」

「なんで僕のを履きたがるんだよ。同じようなの買えばいいだろ」

「もう、わかってないな。朱音はお兄ちゃんのが欲しいんだよ。同じようなのを買ったって意味無いでしょ」


 僕はさっさと着替えて下に降りて待っていたのだが、朱音がリビングにやってくる気配は全くなかった。

 何をそんなに時間をかけているのだろうと思っていたのだが、女の子は準備に時間がかかるという話は聞いたことがある。ただ、今までの朱音であれば迷うことなく一番近くの服を手に取ってそれを着ていたはずだ。

 それなのに、今日はいつも以上に時間がかかっている。

 結局、朱音がやってきたのは僕が着替え終わってから三十分近く経ってからだった。

「待たせちゃってごめんなさい。買い物行こうか」

「そうだな。ってか、貰った服は着なかったのか?」

「一応一通り来てみたんだけどさ、朱音には何となくまだ早いような気がして着れなかったの。夏休みの間に一回くらいは着たいって思うんだけど、何となく着る勇気が出なくて。朱音っぽくない服ばっかりだから何となく恥ずかしくなっちゃうんだよね」

「みんな朱音と感じ違うもんな。でも、朱音なら似合いそうな気がするよ」

「じゃあ、買い物が終わったら朱音ファッションショーを開催しないとね。お兄ちゃんが一番好きな服をくれた人に連絡しちゃおうっと」

「いや、そんなこと言われたら選べないだろ」

 いつもと変わらない朱音も可愛いとは思うのだが、せっかくみんながくれた服があるんだし着てみるのもいいのではないかと思う。

 夏休みの冒険というわけではないのだけれど、朱音がどんな風に変わっていくのか見てみたいという気持ちもあったのだ。

「でも、お兄ちゃんがどんな服が好きなのかみんな気になってると思うけどな」

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