第50話  どうせすぐ飽きるのです

下水道の臭いは臭く心が折れそうです。饐えた臭いや腐敗臭、どぶの何とも言えない臭い、色んな臭いが襲ってきます、堪ったものもではありません。


徒歩で2時間ほどで教会に着くとのことでしたが、もう到着してもいい頃です。

景色が変わりました、教会の地下でしょうか。


この辺りから地上に出ることにします。

鑑定スキルを持っていたら良かったのですが持ってないので周囲に人が隠れているとか分かりません。優愛も分からないようです。

分かることは周囲は静かで人はいないようだという事。


階段がありました。そこを上がります。

上がりきったところに扉があります。

別の通路への扉か建物の中へと続く扉でしょう。

扉の向こうは静かで誰も居そうにありません。

慎重に音をたてないように扉を開けます。

敵は待ち構えているはずです。でも何処にいるのか分かりません。

だからこそ緊張します。

そっと音をたてないように扉を‥‥開けました。

静かです、誰も居ません。取り越し苦労でしたが居ないと安易に考えた時こそ敵は出てくるものです。楽な方に走ろうとする自分を戒め慎重に進みます。

進んだ先にまた扉がありました。

慎重に扉を開け中に入ると建物の中の様でどぶ臭くありません。

優愛を押しとどめ先に僕が入ったので後から優愛が入ってきた時でした。

ゴーンという低い音と共に後ろの扉が閉まったのです。

閉じ込められたのか? と思った時でした。僕と優愛の間に透明な壁が出来たのです。

僕達は別々に閉じ込められてしまいました。

その時は何とかなると考えていたので、閉じ込められても気は楽でした。

数分後、男達がやって来たのです。

明らかに日本人。転移者です。5名ほどいます。全員にやけた笑みを浮かべて僕達を見ています。


「こいつらが帝国の皇太子とその婚約者か?」

「あぁ、そうみたいだな」

「女は美人じゃないか、しかも巨乳って。俺が一番にやっていいか?」


下種なことを叫んでいます。

皆見るからに、日本でもやりたいことをやって来たギャング達です。10代でしょうか。

話す内容が余りにも無神経です。

頭に来たのでスキル『タネ』を飛ばします。

何の音もしませんが効果が無かったのです。


「お前のスキルは調査済みだ、お前の居る空間は次元が違う、ただ見えているだけだ。テレビの様なものだな」

「そうだぞ。でも女は違う、見たまんま隣の部屋にいる。俺達が回してやるから、見て楽しめ」


そう言うと強引に手を引き優愛を隣の部屋から連れ出しました。


「止めて、ちょっと、止めてっ!」


彼女の叫びを無視して、頬を張る男。

パンッという乾いた音が響きました。

怯んだ彼女の服を強引に引き裂きます。

彼女が抵抗するたびに拳で顔を殴ります。


「止めてってば、止めてよぉ!」


バキッと鈍い音が響きます。頬の骨が折れたのかもしれません


「止めろぉ!」


僕の叫びも彼らの喜びの糧にしかなりません。


「もっと叫べほら、一人ずつ挿入してやるからな横で寝とられ彼氏の気分を味わえ」

「おお、AVみたいだ、脚持てよ。持って広げろよ!」

「おぉ全身真っ白だぜ。流石金髪の女は違うな。俺が一番乗りだ。なんだ、お前初めてだったのか」


既に抵抗をあきらめた彼女はされるがままです。

既に綺麗だった顔は腫れ面影さえありません。


「どうして、そんなことをする!?」

「はぁ、俺が楽しいからに決まってるだろ。教皇からも手酷く持て成してやれと言われてるからな」

「そうか、教皇が元凶か!」


全員が彼女を犯し終わった時でした。

ころころと何かが転がる音がしたのです。下を向いて目をそらしていた僕も目を上げました。

転がっていたのは彼女の首だったのです。

頭が真っ白になりました。

怒りだけが僕の感情を支配しました。

次の瞬間僕は彼らの目の前にいました。

次元の壁を飛び越えたのでしょう。

それでも彼らの表情は崩れず余裕の表情です。


「なんだ、お前転移出来たのか? 来なければ苦しまずに済んだのにな」

「燃えろ」


僕は静かに呟きました。

その瞬間男は燃え上がりました。


「何をやったぁ!」


横の男が裸のまま叫びます。


「その汚いもの見せるな」


彼の性器が切られ落下しました。


「ぎゃーっ!!!」


狂ったように叫びます。

他の男が僕に魔法で攻撃しようとしてきます。

僕はスキルで動きを封じました。


先ずは目の前の男です。

怒りを、拳をぶつけたい、叩き殺したい衝動が僕を劈きます。


「お前らは待て、一人ずつ切り刻んでやるから、体の形が残ると思うなよ」


ですが、僕の声はなぜか冷静でした。

彼らの顔から表情が恐怖で消えました。反撃しなければならないのに、逃げなければいけないのに動くことができない恐怖が彼らの精神を蝕みます。


僕は目の前の男の指から間接に沿って一本一本切り落としていきます。


「人間の間接ってどれだけあるんだろうな」


僕の呟きが聞こえたのかその男は涙を流し始めました。


「やべてくれっ!」


その男は叫びます。僕は声と顔の動きは制限していません。当然です苦しむ表情を見せてもらい、無駄だと知りつつ放つ赦免の懇願を哀悼祈願の叫びを聞きたいのです。


「さっき、僕言ったよね。止めてくれって。君たちどうしたっけ? そのまま続けたよね? 自分がしたことを他人がしないと思うのは傲岸不遜だし、その想像力の欠如は哀れでさえあるよね。だから君が止めろって言うのを待ってたよ、切断を継続したくなるだろ? 君が僕に殺してくれって言うまで続けるよ。でも、殺してくれって言っても絶対殺しはしないけどね、自分のしでかした愚かさを死の寸前まで感じて生きろ」


僕はその指を一本一本切り落としていきます。その度に彼は悲鳴を上げ懇願するのです。でも許してあげる訳がありません。それが彼がしたことですから。


「もう面倒臭い」


指を纏めて切り落とすと、悲鳴が響きます。


「もう飽きてきたな」


腕を切り落とします。

その次は足です。

その度に地下に悲鳴が響き渡ります。

一本一本切り落とすのも飽きたころには彼には手も足も付いてませんでした。

それでもその度に止血しているので血は一滴も出ていません。

もう彼は懇願することを止め既に精神が破綻しているようでした。


「もう飽きた」


そう言うと残り三人の表情に喜びの感情が浮かびました。


「助けてくれるのか?」

「なぜ? お前たちは人を殺しておいて自分は殺されず助けてもらえると思っているんだ?」

「思ってないけど助けてくれ。未だ死にたくない。この世界に来たばかりなんだ。リインカーネーションとかいう転生の女神に元勇者田中を殺してくれって言われて転移させられたんだ。俺は悪くない、女神が悪いんだ」

「いや、優愛を殺したのは女神じゃなくお前達だろ、人のせいにするな。そうやってずっと生きてきたから反省しない、だから同じことを繰り返す。死なないと駄目だな。それに、もう田中は女神がスキルを奪って解放したよ、お前たちは用済みだな」

「田中を女神が解放して用済みだからって殺すことはないだろうが!」

「殺されるのは用済みだからじゃない。殺される理由を理解しない阿呆だから殺されるんだ」

「止めろぉ!」

「優愛の仇だ」


そう言って僕は怒りに任せ彼らの首を手刀で切り落としたのです。

彼ら5人全員殺したのですが怒りは消えませんでした。

そこで僕の向ける相手の居なくなった怒りが爆発しました。

地下は破裂し地上から光が差し込みます。


僕は優愛の二つに分かれた体をアイテムボックスに入れるとたった今手に入れたスキル『グラビティー』で浮かび上がります。地上まで出ると目の前にあった建物をこれも今手に入れたスキル『鑑定』で鑑定します。

そこはしくも探し求めてきた教会でした。教会は既に斜めに傾き今にも崩れ落ちそうになってました。


僕は教会から逃げ出して来る一人の人物を探し求めます。

教皇です。

優愛の死を命じたこいつだけは殺さなければなりません。

するといかにも成金趣味な豪華な衣装に身を包み豪華な錫杖を持ったじじいが出てきました。鑑定すると教皇でした。周囲には転生者と転移者を従えヴェンチェズラオの作ったものではないスキル防止アイテムを沢山装備してました。

ですが構いません。

他人がどうなろうと構いません。

先ずは周りの転生者と転移者です。既に皇女を誘拐しているのです、宣戦を布告してないという方が変です。その皇国にいるのですから死なないと考える方がハッピーヘッドでしょう。

キンッ!

キンッ!

何度も甲高い音が響き渡ります。

でも僕の顔も知らない彼らです。何が起こったのかさえ分かってません。

そのうち一人また一人と燃え出しました。

そして彼らが僕の前に到達したときには教皇と数人だけになっていたのです。


「僕が誰だかわかるか?」

「どけ、お前など知るか! 教皇様になんて口の利き方だ」

「そんな人殺しに敬語を使う必要があるのか?」

「お前死ね『ヘルフレイム』これで終わりだ」


その男は僕を『ヘルフレイム』で攻撃します。鑑定するとグレードSの超高温で燃やし尽くす魔法です。

その青い炎は僕を包み続けます。


「はん、馬鹿が教皇様にふざけた態度をとるからだ」


そう言いつつも少々焦りが生じています。

僕が平然としているからです。

僕は燃えまっしぇーん。

そう、燃えないのです、だって不滅ですから。


「ど、どうして燃えないんだ」

「お前たちは関係ない、どっか行け」


こいつらは教皇を守っているだけで優愛を殺したわけでもありません。

既に人を殺しすぎ冷静さを取り戻していたせいでしょうか。残された者たちに憐れみを感じ始めていました。

しかし、全員で一斉に僕を攻撃してきます。

最初は一斉にデバフ攻撃です。効きません。

すると離れた場所から様々な魔法を放ってきます。効きません。


先刻魔法が効かないのは見ただろうと思うのですが彼らの表情は恐怖で引きつってパニック状態だったのです。自分が何をしているのかさえ分かっていないのかもしれません。

彼らに恨みはありません。

ですが教皇を守っているのです。

攻撃魔法で一思いに葬ってあげたかったのですが折角転移してきた人達やこの世界に新たに転生した人たちです。殺すのは可哀そうです。スキル『タネ』で操り無力化しました。残るは教皇唯一人です。

勿論教皇にもスキルで動けなくしました。


「おい、僕が誰だか分るか?」


僕は教皇に偉そうにため口です。恐惶謹言などしません。


「誰だ、お前は?」

「僕はお前らが殺そうとしていた男だ、お前らの勘違いで」

「ふん、ファレノプシスか。殺すなら殺せ」

「お前が優愛、いや、アダルジーザを好きに犯して殺せと言ったそうだな。お前は殺さない。お前が殺してくれというまで殺さない」

「ふん、誰が殺してくれなんて言うか」

「うそだよ、もう面倒だ、アダルジーザは首を刎ねられて死んだ。お前はどうやって死ぬかな。まぁ、皇帝に任せるよ」


僕は能力の届く範囲全てに『タネ』を飛ばし支配下に置きました。次に転生者に命じ教皇を牢に留置させ帝国の使節団が来るまで今まで通り暮らして行けと命じ僕は皇都を後にしました。




数日後僕は帝都にいて皇帝に事の顛末を話し優愛の遺体を家族に渡しました。


その後は逃げるように帝都を去り自宅のあるザッケリーニ王国へも帰らずたった一人で西の大陸にいます。


国の名前?


興味もありません。


どうせ死なないのだから暫くは何も食べず、何もせずに生きていきます。

どうせすぐ飽きるのでしょうけど‥‥



あっ、妹忘れてた・・・・











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最弱職を強要されたけど女神様の恩情で生き抜くどこぞの国の王子様の物語 諸行無常 @syogyoumujou

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