第49話 ヴェンチェズラオは自慢する
磁力船はクルーザーでした。出来れば車も乗せたかったのですが乗せれるほどのスペースはありませんでした。
「どうだ? 俺の作った磁力で動く船、名付けてマグネットシップは?」
「すごいですねえ」
得意げなヴェンチェズラオさんを適当にあしらい船に乗り込みました。
クルーザーは4層で成り立ち甲板下が2層、上に2層となっていてそのまま前世のクルーザーを模した造りとなってます。更に甲板後方にはプールまで。恐らくお風呂代わりなのでしょう。
「甲板の上はリビングと操縦室、下の層は寝室になっている。最下層は燃料タンクと制御装置、つまり魔石と魔道具だな」
急いでいるのですがヴェンチェズラオさんが説明してくれます。説明が終わるまで船は出向しません。だって、ヴェンチェズラオさんは行かないのですから。
かといって、追い返せません、船を借りるのですから。ちっ!
「エンジンは船体の左右に有るんだ。磁力で水を後方に排出することによって推進力を得る、時速100キロはでるぞ。エンジンは左右に広く張り出すことによって横に転覆することを防ぐ役目もあるんだ」
もういいです。早く行かないと妹(?)がというより皇帝が怖いです。名前も知らない(忘れました)妹(?)はどうでも良いのですけど。
「それじゃ気をつけてな、早く行けよ。間に合うといいな」
あなたがそれを言うと邪魔しているようにしか感じません!
今回の救出ミッションのメンバーは僕と優愛ことアダルジーザ、皇太子の婚約者らしいです。カースの首魁の話では皇太子は殺したとのことですので、アダルジーザは僕のものです。前世からの想い人、誰にも渡したくはありません。
勇者もいれば攻撃できる
ですが、先日得たスキルは『魔法グレードS』でした。つまり、魔法を使えるようになっただけのスキル。魔法は別に覚える必要があったのです。なので以前覚えたグレードDの攻撃魔法を使います。
個々の魔法のスキルもあるそうですが、今回は得られませんでした。
船は大海原を順調に進んでいきます。
海しか見えません方向を見失いそうです。ですがこの船には羅針盤があるので大丈夫そうです。出来ればGPSで正確な位置を把握したいのですが衛星はまだ開発してないらしいです。
出発して既に半日経過しました。
綺麗な海です。
青いです。
それも青、綺麗な景色です。
ずっと綺麗な海です。
はい、飽きましたっ。
もう結構です。
船はあまり揺れず酔いもしません。
船はエンジン部分と船体下部のフィンの部分だけが水中にあり船は揺れが少ないのだそうです。
と思っていたら優愛が青い顔してました。
「酔った?」
「駄目、話しかけないで‥‥うっ」
「3か月?」
殴られましたっ。
三日目です。
漸く到着しました。港の人の話では妹(?)の乗った船とはやはり一日遅れでの到着のようです。
一日遅れの上に、彼らにはあったであろう馬車が僕らにはありません。
早急に馬車より早い乗り物を探さなければなりません。大きい港町なので何か見つかるはずです。
「ヴェンチェズラオ様より贈り物です。到着してから渡せと承っておりました」
船のキャプテンが持って来たものはオフロードバイクでした。渡りに船です。これで主要街道をタボラッツィー皇国へ向かえばどこかで馬車と
優愛を後ろに乗せて飛ばします。
優愛の予想以上に柔らかいものを背中に感じつつ悪路を爆走します。背中では押し付けられているにも拘らず暴れる二つの物体が心地よいです。
「まだ追いつかないな」
かなり走ったのですがまだ姿が見えません。
まぁ、どんな馬車なのか分かりませんが、馬車なのかも分かりませんけど。
一台の馬車も見てません。
「一日遅れだからね、このバイクが平均60キロだとして馬車が20キロなら、馬車は昨日一日で180キロ走ったとしたら3時間で同じになる、今日既に20キロ走っていたら1時間以内には追い付く計算だよね」
「いや、分かってたよ?」
「でも出発時間が早かったり、休まず走り続けてたら話は別だよね」
「‥‥何か上り坂だな、魔素足りるかな」
「登りなら追いつくかもね、馬車は更に時間掛かるだろうし」
結局上り坂を過ぎて暫く行ったところで馬車が見えました。
目的の馬車かどうか確認します。
ですがスパイAが乗っているはスキルのお陰で分かるので間違いないでしょう。
「すいません、妹(?)乗ってないですか?」
「ふっ‥‥」
ん?
馬車に乗っている人に鼻で笑われました。
なぜ?
「ちょっと、康介、あいつらスピード上げたわよ!」
「いや、こっちバイクだから、落ち着いて」
「弓! 弓向けてるよ! 何とかして!」
「無理! 運転してるから集中できないから」
「じゃ、私がやるから! 文句言わないでよ『天にまします我らが女神リインカーネーションよ、願わくばあの馬鹿どものステータスを可能な限り下げ給へ、ダウンステータス』よし、下げたわ」
いや確かに弓の攻撃止んだけど‥‥
「ねぇ、そのキリスト教の祈りの様な呪文今必要?」
「やーね、雰囲気よ」
「君の雰囲気を盛り上げる為に僕の胸に矢が刺さったんだけど?」
「やーねー、死なないでしょ?」
「痛いわ!」
「もう怒んないでよ、妹さん確保したんだから」
「良かったよ、すぐ見つかって」
スパイAを探しました。ですが、かれは縛られてました。
「カッサンドラ様はこの馬車にはいません、私がスパイなのを知られてしまいました。それで私を囮にカサンドラ様は別の馬車に乗せられ違う道を! 裏街道です、直ぐに追ってい下さい」
「どうしてバレた?」
「分かるスキルを持ったカーネルがいます。第三皇女奪取作戦の指揮を執っていた者です」
「なぜ分かったんだろ」
「『鑑定』スキルでしょ。そいつ、転生者か転移者じゃない? 間に合わなかったら皇国の首都での奪還作戦になるなじゃないの?」
「皇国には転生者は沢山いるのか?」
「ええ、幹部クラスはみなそうです。様々なスキルを持ってます。世界中に教会があり教会が調査して確保しているのです」
「急ぐぞ」
スパイAは馬車の馬で帰ってもらい二人でバイクに乗って妹(?)を追いかけます。
裏道の場所はここから南の方を平行に走っているそうです。
森の中の最短距離を走らせ直ぐに裏街道に着きました。恐らくあの馬車とそれ程の違いはないはずです。
このまま皇国に向かいます。
絶対に途中で追いつくはずです。
▼△▼△▼
今、目の前にはタボラッツィー皇国の皇都タボラツィストブルグの外壁を見ています。金にものを言わせた帝都の第四城壁よりも高く厚そうです。
もうカッサンドラ奪還作戦は知られているようです。僕達が皇都に入るのを手ぐすねを引いて待っていることでしょう。
でも入らない訳にはいきません。虎穴に入らずんは虎児を得ずです。
「あの~、聞きたいことがあるのですが?」
「なんだ? 逮捕するぞ」
門を守る衛兵に訊きます。まぁ、答える訳がありません。
ですのでスキルです。
「なんでしょう?」
「一番偉いやつはどこに住んでる?」
「一番偉いのは教皇です。タボラッツィー教会か大聖堂にいるはずです」
「そこまではどうやって行く?」
「この道を真っ直ぐ進めば着きます。この皇都の中心にあります」
真っすぐ進んで良いのでしょうか。片っ端からスキル『タネ』で味方にしてしまえば教会まで行けるのでしょう。でも100%ではありません。このスキルが使えない人間がいるはずです。
「見つからずに進む方法はないか?」
「地下に下水道が通ってます。教会まで通じてますので行けるはずです」
「はずというのは?」
「汚いので普通は通りません」
なるほどですね。
「優愛、下水道で行く?」
「皇帝の命令だから」
「君は命じられてないだろ‥‥っていうか僕も無関係なんだけどな。本物の皇太子は今頃どこで何してるんだろうな、恨むよ、ほんと」
「本物の皇太子は愚痴を言ってるわね」
愚痴言う暇があったら助けてほしいものです。
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