第27話 懐かしきかな日本人

帝都ドコゾノブルグを出発した次の日の昼過ぎにマタリという小規模の街に到着しました。漸く宿に泊まることが出来ます。

風呂付の宿を探したのですが一軒だけありました。

取り合えずお風呂に入って夕方街を散策します。


夕方になったので街の散策です。

散策すると店は色々あるのですが小規模で置いてある商品の種類も少なく購入欲が湧きません。

買ったのは主に食べ物。

買い食いです。

食べながら歩いていた時でした。


「あれ見て」


茜が顎で方向を指し示します。見ると明らかに日本人です。珍しいです。懐かしい気分になり駆け寄ろうとしますが茜に手を引っ張られました。


「待って、あいつ女性を頭の中で犯してハーレムハーレムって言ってるよ。危ないよ」


どうやら異世界イコールハーレムという思考の持ち主のようです。女神に貰ったスキルの力を使って刹那的に女性を集める積りでしょう。アッサムが危険です。


「私も危ない.用心しないと」

「茜は大丈夫だと思うよ?」

「なんでよ!」


怖いです。


「取り敢えず無視の方向で」

「オッケー」


その日本人の横を通り過ぎようとした時でした。

その男が声を掛けてきたのです。

まさか僕達が転生者だと気付いたのでしょうか。


「あれ? 君、美人でおっぱいデカいねぇ」


突然のセクハラです。。

目的はやはり転生者ではなくアッサムの巨乳だったのです。


「すいません。こちらのお方はとある王国の侯爵令嬢です。失礼な行動はお控えください」


権力を振り翳せば引くと思ったのです。


「おお、侯爵令嬢! いいねぇ、俺のハーレムに加わらない? まぁ、嫌だと言っても連れてくけど?」


余計に興味を持たれました。

権力に屈しないのはいいですがあまりに強引です。

人の話を聞かないタイプです。


「失礼ですよ、侯爵様に殺されますよ?」

「殺される? 偉そうに! 殺せるものなら殺してみろ。殺すのなら俺がお嬢様奪っても正当防衛だな」


どうして、悪人に抵抗しただけなのに正当防衛になるのでしょう。頭にウジでも湧いているのでしょうか。

危険な思考のやつです。

兎に角、触らぬ尻に告訴無し、もとい、触らぬ神に祟りなしです。


「それじゃ」


シュタッと手で挨拶をして去りましょう。


「ちょっと待てよ」


イケメン風に僕達を呼び止めました。


「お嬢様は置いてけよ」


簡単には行かせてもらえないようです。


「茜何か対抗できるスキル持ってるか?」


あの日本人に聞こえないように小声で呟きます。


「そもそもあいつの持ってるスキルが分からないから判断しようがない」


そうです、それが一番の不安材料です。

日本人なら良いスキルを持っているはずです。

勇者なら状態異常無効を持っています。

勇者なら僕のスキル『タネ』は使えません。


「あいつ勇者かな?」

「え~、分かんないよ」


そりゃそうです。


「だったら僕が話しかけるから思考読んで」

「分かった」


僕は思考を誘導できるよう話しかけます。


「おにいさんの顔は異界の勇者みたいに平たいね? おにいさんも勇者?」

「おっ、良く分かったな、もちろん勇者だ、だから俺が怒る前にその女を渡せ」


くそっ、やはり勇者です。

もうアッサムを渡すしかないのでしょうか。

あの巨乳を手放すのは悔やまれて仕方がありません。

出来たら貧乳の方で手を打って‥‥

余計なことを考えてたら茜が僕の尻に蹴りを入れます。

そして直ぐに耳元で呟きました。


「あいつ勇者じゃないよ。連鎖的に職業も分かった。あいつ『アーキテクト』よ」


大工さんかな? じゃ、余裕じゃん。


僕はスキル『タネ』を使い行動を封じ、直ぐに意識を刈り取りました。


「上手くいったね」


意識を無くし倒れたままの男は放置します。

当然の罰です。

直ぐに意識は取り戻すでしょうから宿へ戻りました。


「康介、よくスキルの使用に踏み切ったよね?」

「ああ、だって職業『アーキテクト』だろ。大工なんかに負けないだろ」

「はぁ? 『アーキテクト』って多分創造者って意味の方よ。恐らくそのスキルにはいろんなものを創造できるスキルがあるはず。もしかしたら『オールマイティー』って万能スキルがあるかもしれない。凄く危険だったのに良く戦ったね。無知って怖いわぁ」

「ありがとう。勝って当然な試合に勝っただけさ」

「はぁ、阿保って怖いわぁ」


翌日馬車乗り場に行くとそこには昨日の日本人の姿があったのです。


「お! お嬢様、昨日はごめんな。何か突然寝てしまった。どう、一緒に来ない? って言うか連れてくけど」


全く凝りてないようです、この日本人は。

ということは昨日何があったのか理解できてないのでしょう。幸運なことに僕のスキルが知られることはなかったようです。


「いえ、お断りします」

「俺はこっちの馬車だ。一緒に来ないとそっちのガキ殺すぞ」


カチン!


僕は大人げなく、だって子供ですから、彼の意識を略奪しました。そして彼を動かし乗る予定の馬車に乗車させて気絶させました。半日は目を覚まさないでしょう。目を覚ますころにはデンファレ王国とは方角が違うコスタリカ王国に到着しています。まぁ、目が覚めたら怒るとは思いますが勝手に怒ってれば良いのです。


僕達が馬車に乗り込むとすぐに馬車は出発しました。どうやら僕達を待っていたようです。本当に迷惑な日本人でした。


アッサムが太腿をぱんぱんと叩き


「ここ良いわよ」


と膝枕をしてくれました。


「私のでもいいよ」


茜が気を使ってくれます、僕も気を使って言いませんが茜では硬そうで頭が痛くなりそうなので遠慮します。


「固くない!」


また読まれました。

もう心を読むのは止めて。


「いや」


‥‥



いったい何日経ったのでしょう、ここはデンファレ王国の王都イルガチェフェ。

漸く到着しました

ここには勇者高杉隆文達がいるのでできれば会いたかったのですが絶対に外せない会議中で会えませんでした。

それから二日馬車に乗り続け遂にブラジル領ブラジルサントスに到着しました。

もう馬車はこりごりです。



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