第17話 発見
サーガ王国の王宮に吉報がもたらされたのはファレたちが帰国した次の日の午後であった。
それはアッポンディオ捕縛の知らせであった。
アッポンディオ達は国境へ向かうも魔物の群れに立ち往生、そこをサーガ王国の兵士に発見されたのだ。
王宮ではアッポンディオ発見の為の情報を
「皆さん、ありがとう。私もアッポンディオが逮捕されたことに無上の喜びを禁じ得ません。これも我が娘のフィアンセ、ファレノプシスの情報があってのことです。彼を称えましょう」
会場には拍手喝采が沸き起こり歓喜で満たされた。
これで帝国への面目が躍如としていたのだ。
しかし、歓喜の喧噪の中、声を上げる者があった。
アダルジーザであった。
「閣下、今なんと仰りました?」
「喜びを禁じ得ないと」
「いえ、その次です」
「娘のフィアンセのファレノプシスの情報だと」
「それです、それ! ファレノプシスと仰いましたか、間違いありませんか?」
「ええ、間違いありませんが。帝国の皇子と同じ名前だったので間違えようがありません」
「その人の特徴は?」
血の気が引いたアダルジーザの顔には一縷の望みを見出した安堵が見て取れた。
アダルジーザはその特徴に確信を深めていた。
ただ一つ決定打に欠けるのは体に刻まれた紋章を確認できていない点だった。
「今はお宅にいらっしゃいますか?」
「いえ、もう帰国しましたよ」
「ど、どこの国でしょう?」
「デンファレ王国です」
正反対だった。
執事が誤って発言したと思ったこの国とは正反対の場所にあった。
アダルジーザは執事があえて漏らしてしまったと思わせるように発言し彼女の行動をミスリードしていたことに気が付いた。
「マリー、今すぐにデンファレ王国に向かうよ」
「はぁ、今すぐって、今晩のディナーは? 牛ひれのステーキだよ?」
「あら、素敵! ってステーキなら旅の途中で死ぬほど食べていいから」
「塩と胡椒も忘れずにね」
二人は食材をサーガ王国より献上してもらい直ぐにデンファレ王国を目指したのであった。
◇◇◇◇
到頭明日です。明日には帝都に到着です。美味しものが食べられる。でもそれ以上に明日は良いことがあります。
そうです。
到頭聖剣グラムと話せる日がやってくるのです。
「くくくくっ」
「どうしたの? 気持ち悪いいわよ」
所詮アッサム、女性だ! 男のロマンが分かってない。
「明日が何の日か知らないのか?」
僕は自慢げな顔で胸を張り理解できない相手を諭そうとする。
「ああ、あなたが詐欺に気付く日ね」
し、失礼なフィアンセだ! 婚約解消するぞ!
でも、もしかすると貴族になれるかもと思うと言えません。
って言うか実際には婚約はしてないのですが。
「明日憶えてろよ」
「いえいえ、忘れますよ、忘れててあげるわよ。あなたが恥かかないように」
くそっ。でも明日になればアッサムも分かるでしょう。
そしたら彼女に言い放ちます『ほら、言っただろ?』
遂に夜が明けました。
到頭その日がやってきたのです。
ふんふん、見てろよ。
僕は剣に話しかけます。当然剣は言葉を返してくれることでしょう。
「剣よ、剣よ、剣さんよ。ほら何か言って。恥ずかしがらないで何か言って?」
未だ覚醒してないのでしょうか?
「ぷっ!」
隣でアッサムが噴き出してます。
とっても失礼な奴です。
「剣さん、どうした? ほら、ほら。返事は? お返事は?」
待てど叩けど返事しません。
繰り返し繰り返し話し掛けますがうんともすんとも言いません。
「ほら言ったでしょ?」
くそっ、僕が言いたかった言葉をアッサムが僕に言い放ちました。
もう破談です。
婚約解消です。
「ほらしょげないで。また買ってあげるから」
「うん」
アッサムの優しさに婚約解消は止めることにします。
そして、また剣を買ってくれるそうです‥‥また? って言うか、一度も買ってもらったことはないのですが‥‥
しかし、聖剣はまたも偽物だったのです。
またも騙されました。
2回もです。
もう騙されません。
アッサムが剣を買ってくれるそうなので今度こそは帝都でまともな剣を購入します。
そして馬車は帝都に到着しました。
未だ夕方少し前です。
宿を取り、その後は約束した剣を買ってもらいに武器屋へ向かいます。
勿論聖剣など買いません。
もう普通の剣で結構です。
話す剣など存在しません。
あれはフィクションです、小説の仲だけの話です。
安かろう悪かろうです。
値段が安いのには理由があります。
もう値段の安い普通の剣を買います。
もう高い剣も、値段の安い聖剣も僕には必要ありません。
さぁ、武器屋に到着しました。
流石帝都の武器屋、中でもここは老舗らしいです。
品揃えは豊富です。
結果、ここは当りでした。
遂に僕の剣を見つけました。
『聖剣エッケザックス』です。
今度こそ本物です。
だって金額が1000万ゴルドです。
今は買えませんがいつか購入します。
勿論店員さんに確認します。
「これ本物ですよね?」
「いえ、偽物ですよ。お客さーん、こんな値段で本物が変える訳がないでしょ」
「ほら、本物なんて売ってないのよ、懲りた?」
なんか、アッサムのにやけ顔が辛辣です。
でもいつかは本物の聖剣を所有してやると心に決めた帝都でした。
結局僕の聖剣所有欲は全く懲りてないようです。
宿に戻りました。
夕食は高級宿ではないので普通です。
あぁ、アッサムの実家での高級な夕食の数々が忘れられません。もう婿入りするしかありませんが、侯爵家は長男が継ぐので無理ですが何とか侯爵家と親戚付き合いをしてうまく貴族に成りあがれないものか模索したいです。
「アッサムは小さい頃いつもあんな美味しい料理を食べてたのか?」
「殆どね。いつもではないけど、あんなものね」
「くそっ、忌々しい!」
「貴族に生まれなくて残念ね。でも仕方ないでしょ? これから頑張りなさい」
「何かアッサムがお姉さんみたいなこと言ってる」
「私の方が年上でしょ? 言う事を聞きなさい」
でも姉が出来たようで嬉しかったのは事実です。
でも本人には言いません。
帝都はお店が多くお金もあるので暫く帝都で遊ぶことにしました。
勿論武器屋で武器を探したいのですがそれだけではありません。
役に立たないニルギリに代わりに役に立つ奴隷を買いたいのです。聖剣を売った100万ゴルドの半分は残ってますから。
武器屋の店主に奴隷商について少々伺ったので明日向かいます。
場所も聞きました、相場も聞きました。高くなければ何とか買えそうです。
僕に凄い回復魔法が使えたら、腕がなかったり目が見えないような奴隷を安価に購入し魔法を使って正常に戻すのですが、そんなことは僕にはできません。
せいぜい薬で体力を回復したり、軽い傷を治療するくらいです。
仕方無いので普通の奴隷を購入します。
ですが武器屋の店主によれば現在奴隷商のモラルの低下が著しいそうです。
なんでもスキル『鑑定』が使えないことを良いことに持っていないスキルを持っていると虚言を弄し高く売りつける詐欺が横行しているようです。
他にもありもしないスキルを持っているとして高額で売りつけることもあるようです。
でも、僕は大丈夫。
だって賢いから。
今までだって騙されたことはありませんし。
相手が騙そうとすれば僕は直ぐに分かります。だから騙されません。
だから明日はアッサムは置いて行こうと思ます、煩いですから。
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