第3話

 晩御飯よ、と母の声が聞こえたので、私は一度階下のリビングに行って食事を摂ったあと、また自室に戻ってきた。

 また、私はスマホを開く。自分でも嫌になるけど、私は勉強しない。バカのくせに、全然勉強していない。

 脚本班のLINEに三件のメッセージが届いていた。順番に私は読み始める。どのメッセージもかなりの長文だった。

「中田です。演劇部員なので、国崎にスカウトされました。よろしくお願いします。

 脚本づくりは難しいです。九十分の劇を作るためには、全部でおよそ三万字の柱、台詞、ト書きを書き上げなければなりません。ストーリーをゼロから作る予定だとのことなので、僕はこの脚本班の存在を、いささか懐疑的にとらえております。

 しかし、クラス全体でやると決めたからには、脚本班に入ると自分で決めたからには全力で頑張る所存です。脚本のことで何かわからないことがありましたら遠慮せず僕に聞いてください。では、これからよろしくお願いします。」

「連絡が遅くなり申し訳ないです、国崎です。よろしくお願いします。

 演劇部の中田くんをはじめ、山村くん、持田さん、柚原さん、そして僕の五人で脚本を書いていくことになりました。まずは、みなさん集まってくれてありがとうございます。中田くんは『ゼロから作っていく』と言っていますが、本当に何もないところから作っていくとなるとさすがにハードルが高すぎるので、僕が考えた構想をお伝えすると、既にあるシリーズものをオマージュする形にしようと考えています。お伝えするのが遅くなってしまいすみません。いかがですか?」

 ええ! 急に言われても困っちゃうな……

「持田です。よろしくお願いします。

 国崎くんはオマージュが良いと言っていますが、私は反対です。自分たちで創作すると決まった以上は、ゼロからストーリーを作るべきではないでしょうか。五人もメンバーがいますので、それぞれの好きなものを集めることで素晴らしい脚本が作れると思います。」

 これは、何も言わないわけにはいかない。自分の考えで、言葉を入力していく。その作業は、私にとってあまりにも久しぶりの感覚をくれた。

「私もゼロから書く方がいいと思います。ただ、五人分の好きなものを集めようとすると、どうしても系統がばらついてしまうのではないでしょうか。みんながバラバラだと、集めて一つのものをつくることは難しいと思います。まずは、どんな劇にするのか指針を設けるのはいかがでしょうか。」

 私はそっと送信ボタンを押した。

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