第2話

 私は国崎くんとの個チャを開いた。まだ何も会話したことがない、真っ白な画面。私は一文を打ち込む。ネットで調べたところ、演出は全ての役職に関わる立場らしい。じゃあ、脚本ならできるかな。簡単じゃないのは、わかってるつもり。

「脚本、やりたいです。」

 既読はすぐについた。ピコッと音を立てながらメッセージが現れる。

「了解です!」

 案外簡単に決まってしまったので、私は拍子抜けした。脚本というものを知っているかどうかとか、何かしら質問されるかと思っていた。

 一分ほど「了解です!」を眺めていると、今度は次のメッセージが送られてきた。すぐ次の連絡が来るとは思っていなかったので、慌ててしまった。だって、時差で送られたのにすぐ既読つけちゃったら、国崎くんにメッセージを眺めていたことがバレてしまう。

「脚本班のグループに招待しました。入ってね」

 私はオーケーと入力し、適当なスタンプを探した。うさぎのキャラクターが「OK」と書いた看板を持っている柄のものを選び、送信する。すると、こちらもすぐに既読がついた。

 確かに「脚本班!」に招待されていた。なぜビックリマークがついているのかはわからないが、気合を感じる。

 今ならまだ、やっぱりやめると言っても大丈夫。私みたいな役立たずが劇作りで重要な脚本班に入らなくたって、みんなは絶対困らない。そう頭の中を駆け巡るマイナス思考を押しやり、私は強めの指圧で参加ボタンをタップした。なんか、ちょっと嬉しい。

 私はスマホを置き、天井を仰ぐ。

 入っちゃった。どうしよう、入っちゃった。

 今ならまだ、やっぱりやめると言い出しても大丈夫じゃないか。脳内で私が私にささやく。でも、決めたんだ。やるんだよ。できるんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る