裏切られた

すごい、面白すぎます。なんて言ったってこのレビューを書きたいがためにカクヨムの会員登録をしてしまったくらいです。
普段レビューなどは全く書かず、慣れていないため、拙い文章になってしまうことを、どうかお許しください。

はっきり言って、タイトルを見たときはこんなに感動と興奮を与えてくれる作品だとは思っていませんでした。
自分語りになってしまうのですが、私はなろう系があまり好きではありません。
最初こそ楽しく読んでいましたが、様々ななろう系を読むに連れて、話の展開があまりにワンパターン過ぎることに気付いてしまったからです。
以来、私はなろう系を読むのをやめてしまいました。
そんな折、なろう小説あるある的な動画をYoutubeで発見し、その動画の中で、なろう系を皮肉るような小説も出ていることを知ります。
私はそういった風刺的な、斜に構えたものがむちゃくちゃ大好物なので、色々漁っていると、この作品にたどり着きました。

タイトルは最近流行っている追放系を皮肉った感じで、よくある一発ギャグ的な小説かな、と軽い気持ちで読み始めました。
タイトルに裏切られた。
そう考えるまもなく早々に引き込まれ、気がついたら読み終わっていました。

この作品の魅力はかなりたくさんあるのですが、あえて挙げるとするならば、主人公エリエスの話し方のかき分けが細かい点と、行間を読ませるのがすごく上手い点です。

まず、エリエスの話し方ですが、エリエスの環境の変化に応じて、細かく書き分けられています。
初期のエリエスは、魔王が未だ天を黒雲で覆い、実の父や師匠が殺されたこともあってか、かなりスキのない話し方をしています。
その後、魔王を死に導くために100回以上のループを経た彼は、数百年という途方もない年月を生き、出来事を全て覚え自分の未来がある程度わかってしまいます。
そのせいか、達観したような、そしてどこか寂しそうな話し方に変わっています。
しかし、ループ後の世界線では、先に魔王が倒され、父も死なず、ループそのものがなかったことになっています。
そのため、エリエスはあまり背負うものはなく、実年齢と変わらない、危なっかしいが、それでも希望に溢れているような話し方になっています。
ここのかき分けが上手く、彼がどんな気持ちで今を生きているのかが伝わってきました。

次に、行間を読者に読ませるのが上手い点です。小説はその特性上、できるだけ詳細に文章を書いたほうが想像し易いのですが、この作品は書いていない場面も容易に想像できてしまうのです。
他の方もおっしゃっていましたが、ノノアが魔王戦で助かったきっかけとなった傷薬のシーンで、傷薬が効果を発揮した描写はありませんでした。
それなのに、前のエピソードやノノアの語りにより、上手く機能したのだなと、無意識に解釈できました。
そういった、想像力をくすぐるような書き方が随所にみられ、詳しく説明されるより想像しやすいです。

最後に、作者様、こんなにも面白い作品を作って、世に出してくれてありがとうございました。
いい意味で裏切られました。
これだけの感動と高揚感は、かなり久しぶりです。
漫画が出ているとのことなので、そちらも購入して読んでみます。

長々と駄文&上から目線のレビューになってしまい、申し訳ありません。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。




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