2#アナグマの執着
森に堕ちてきた風船の包みに入っていた花の種を撒いてから、幾月が経った。
他の動物達は花の種の事はすっかり忘れて、其々の生活に勤しんでいた。
しかし、まだ花の種に執着する者が居た。
「ボル、まだ花が咲くのを待ってるの?」
まだ芽の出てこない土を、じーっと見詰めているアナグマのボルを通りすがったキツネのホイタが呼んだ。
「うん。僕、咲くの待ってる。」
「しっかし、本当に咲かないね。あの風船に付いてた包の中、本当に花の種なのかな?
ただの小石・・・」
「小石じゃない!!」
アナグマのボルは、キツネのホイタの話を遮るように声を荒げた。
「これ以上、この花の種の悪口を言ったら噛みついてやるからな・・・さあ、この花種にケチを付けるなら早く出ていってよ!!」
アナグマのボルは肩を震わせて、キツネのホイタに怒鳴った。
「ざけんなよ!!アナグマ!!そんな言い方ねぇだろ?!
金輪際お前とは話を聞かない!!
もう絶交だ!!」
「絶交で結構!!この花の種の悪口を言うやつは、こっちから願い下げだね!!」
風船が運んできた花の種に執着する余り、ひとりの友を失ったアナグマのボルはお構い無しに、ただひたすら花の種が埋められた土をじっと見詰めていた。
月日は流れた。
アナグマのボルは相変わらず未だに芽が出ない花の種を、腹ごしらえ以外はじっと見詰めて花が咲くのを待ちわびていた。
「用を足すのは、この花の種の栄養のために僕の糞尿をあげてやってるんだ。
だから、早く美しい花を咲かせておくれ。」
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