森に堕ちてきた風船が運んできた花の種

アほリ

1#森に堕ちてきた風船

 それは、森の木々の隙間から覗く青空の向こうから太陽の光で輝きながら降りてきた。


 ゆっくりと、ゆっくりと。


 ふわふわと揺れながら。


 「ふ・・・ふ・・・?」


 木の幹にしがみついているキツネのホイタは、目の前をすり抜けてゆっくりと降りてくる物体に目を丸くした。


 「ふうせん?!」


 アナグマのボルは空の彼方から、枝をすり抜けて森の中へ落ちてきたオレンジ色の風船に興奮気味に追いかけた。


 「風船だー!!」「ふうせん!!」「風船だぁーーーー!!」「ふうせんふうせん!!」「風船きれいぃぃ!!」


 他の動物達も、ゆっくりと地面に降りてきたオレンジ色の風船に群がってきた。


 「いやはや。空から落ちてくるものの正体が、ゴム風船だとは。

 何処から飛んできたかなあ。遠く遥々。」


 木の枝から地面に降りたカケスのジェーは、まじまじと中のヘリウムガスが少し抜けて若干縮んでいるオレンジ色の風船を眺めた。


 「あれ?風船の紐に何か包みが。」


 テンのナップは、風船の紐を捕まえて包みを爪で破いてみた。


 


 ビリッ!!




 「おっ!花の種じゃないかっ!!」


 「ははぁん。この風船は、どっかで人間どもが花の種の入った包み紙を風船に紐に付けて飛ばしたなあ。」


 カケスのジェーは感慨深げに言った。


 「ねぇ、アナグマさん。早速だけどこよ花の種をこの森の草原の隅に撒きたいんだけど、種を埋める穴を掘って!

 キツネさんはあの川に口いっぱい含んで、埋めた種に撒いて!」


 「ほいきた!!」「がってん!!」


 アナグマのボルは早速地面に爪をたてて地面に穴を掘って花の種を埋め、


 キツネのホイタは川のせせらぎに頬っぺたいっぱいに水を含んで種を埋めた土の上に頬っぺたの水を吐き出した。


 「どんな花が咲くかなあ?」


 空から落ちてきたものは、みんなの希望。


 森の動物達は、落ちてきた風船が運んできた花の種に芽が出て綺麗な花が育つのを心待ちにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る