第5話

修学旅行から帰った、その日の晩、11時には寝てたら、やはり11:11になって、香絵ちゃんは、あらわれた。

「あやめちゃんといっしょの修学旅行、めっちゃ楽しかったよ~。ありがとうーっ」

「ボクも、香絵ちゃん、いてくれたおかげで、1人でなくて楽しかったよーっ」

って答えた。

お土産屋さんで、長野のおまんじゅうを買ってきたから、箱を開けて、

「お土産に、長野のおまんじゅう買ってきたよーっ」

って言って、しばらくしてから、箱の中をふと見たら、その中の1個、包み紙だけになってたから、

ああ、香絵ちゃん食べたのかなあ~って思った。

「ごちそうさま~。おまんじゅう美味しいね!」

って言ってくれた。


「声だけでなくて、香絵ちゃんに会いたいなあ~」

って言ってみた。

「そのうち、会えるかもよ...」

って、ふふふって笑ってた。


高校は女子高に本当は行きたかった。でも、そういうわけにもいかず、結局、府立高校に進学することになった。

卒業文集には、ボクは香絵ちゃんのことを書いた。でも、はっきりと、香絵ちゃんっていう名前は書かずに、

「高校に行って、毎晩、想いをよせている、好きな子と実際に出会えますように!」

っていう形で書いておいた。


卒業式前日の11:11に、香絵ちゃんは、あらわれた。

「明日、うちの中学の卒業式だから、香絵ちゃんも、ボクといっしょに卒業式に出てみる?」

って香絵ちゃんに聞いてみた。そしたら、香絵ちゃんは、

「あっ、明日は他で用事あるから~。あやめちゃんのほうには出れない~」

って言っていた。


高校に行く初日の前の晩に、11時には寝ていたら、ちょうど11:11になったら、やはり香絵ちゃんは、あらわれた。

「あやめちゃんも明日から高校生だね~。おめでとう~。おたがいに、おめでとう~」

って言ってくれたから、

「ありがとうーっ。香絵ちゃんのおかげで、めっちゃ楽しい中3だったし、明日からは、高校に行けるよ~」

「高校で、あやめちゃんと会えるかな~。でも会っても、あやめちゃんには、うちだってこと、わからないかもね」

「そんなことないよ。香絵ちゃんなら、実際会えばわかるよーっ!」

「まあ、あやめちゃんは、うちのこと覚えてないかもね。うちも、あやめちゃんのこと、たぶん覚えてないかも...」

「声を聞けば、わかるし、香絵ちゃんの姿を見たら、ぜったい香絵ちゃんだってこと、わかるよーっ!」

「ふふふ...もしかしたら、そうかもね。じゃあ、またね...ばいば~い」

って言うと、香絵ちゃんは静かになったから、ボクも、ふとんにもぐり込んで、すぐ寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る