第4話

高校へは、本当は、女子高に行きたかった。

でも、結局、府立高校に進学することになった。


高校の入学式の前日、寝てたら、

「明日から高校生ですねっ。おめでとうーっ」

って女の子の声、聞こえてきた。

声まで聞こえてきたの初めてだったから、びっくりしていたら、

「うちの部屋にようこそーっ」

って言われたから、

「あっ、よろしくお願いします」

って答えた。

「もう、毎晩、すでに、よろしくしてきてるわよーっ」

「あっ、そうですねっ。ありがとうございます」

「でも、最初に部屋に来た時よりも、もっと、一段と女の子みたいになってきてるわねーっ。毎晩、体を愛撫してキスしてきた甲斐もあったわね」

「なんで、ボクに、毎晩、そんなこと、してくれてたんですか?」

「あなたは、わたしの弟子なのよ」

「弟子?何のですか?」

「美術の!絵とか、そういう芸術の!」

「わたしは、伊勢さんに、あなたのこと、よろしくねって、言われてるのよ」

「伊勢さん?」

「わたしの師匠である伊勢さんよっ!百人一首とか、知ってるでしょ!」

「知ってます。高校の近くに、伊勢寺あります」

「そうでしょー。わたしはね、毎晩、あなたに愛と芸術を体を通して説いてきてたのよ。中3の1年間で。あなたも、明日から高校生になるから、こうやって、話をしてるのよっ」

「あっ、そうだ。お名前は?お名前教えていただけますか?」

「わたしは、かえよっ!」

「かよちゃんですねっ!中3の間、ありがとうございました。かよちゃんは、いつも、なんで11:11に、あらわれるんですか?」

「誕生日なのっ!」

「えっ、かよちゃんは、11:11生まれなんですか?」

「ちがうわよ!べつに11:11ではないわよ」

「あ、11月11日なんですね。ごめんなさい」

「1111年よっ!」

「え~っ、かよちゃん、1111年生まれなの~っ?」

「何か、あかんの?1111年やったら」

「めっちゃいいですーっ!1111年って、1並んでて」

「そうでしょー。あっ、そうだ、ちょっと友達と交信するね」

「どうぞ」

「あっ、もしもし、かえだよーっ!えっ?そう、かえだよーっ!うんうん、そうそう...じゃあね~またね~」

「あっ、かえちゃんだったんですね」

「香る絵と書いて香絵っ」

「可愛い名前ですねっ」

「でも、あなたは、明日になったら、わたしとしゃべったこと、覚えてないからねっ」

「え~っ、じゃあ今のうちにメモしとこーっ」

「あっ、書いても、明日には、その文字、消えてるから...」

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