第4話  有村家の三姉妹

 この聞き覚えのある声は、女の子の声だった。


 それにこうして、高校入学初日から敦也に話しかけてくる人物は学年全体の中で0%に等しい。


「さて、後ろにいる人は、一体誰でしょうか?」


 と、突然のクイズを出してくる。


「ヒントその一、私は三姉妹の中で、一番上のお姉ちゃん、長女です」


 そして、何も考えていないのにヒントを出してくる。


「ヒントその二、私は三姉妹の中で、真ん中の姉、次女だよ」


「ヒントその三、私は三姉妹の中で、一番下の姉、三女」


 と、三つのヒントを出してくるが、その三つとも、ヒントを出す人間の声が違う。


「そして、最後のヒントは、今、あなたの後ろでサプライズ成功だと思って、嬉しい気持ちでいっぱいの女子高校生です。では、回答をどうぞ!」


 と、答えを求められる敦也は、もう、ヒントを出している時点で、諦めた。


 何を諦めたか、それは、この後ろにいる三人から逃れることはできないからである。


(ねぇ、もう、やめてくれない? サプライズって、最も心臓に悪いサプライズがあるのだろうか?)


 敦也は、ふぅ、と、息を吐いて、目隠しされた少女の両手をはがして、後ろを振り向いた。


「なんで、唯姉、里菜姉、咲弥姉が、この高校、この教室に三人揃っているんだよ」


 敦也は、最も会いたくなかった三姉妹が目の前にいて、最悪だと、思った。


 それはなぜか、この美人三姉妹は、敦也の同級生、同学年である前に、姉である。


「なぜって、この学校を受験したからに決まっていますよ」


「いや、唯姉の言っている意味が、分からないのですが、俺、受験校教えたつもりもないし、今日だって、姉ちゃん達の入学式の方に出席してくれって、父さん達に言ったはずなんだけど……」


「うん、だから、お父さん達、もう来ているよ」


 笑顔で唯は言った。


「だから、今日からクラスメイトとして、よろしく『あっちゃん』」


「よろしくじゃねぇ~」


 周りのクラスメイトが、男女問わず、敦也の方に視線を向けているのは、分かっていた。


 だって、この美人三姉妹に囲まれた時点で、ゲームオーバー。


 普通の男子生徒だったら、嬉しい。嬉しいはずなのだが、敦也は、嬉しくない。


(また、姉ちゃん達と三年間過ごすのかよ……)


 そう、普通の三姉妹ならいいのだ。


 この三姉妹は、只者ではない。


 【ブラコン】という名のついた、超絶ブラコンの三姉妹なのである。

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