第5話 第四〇回 県立伏見高校入学式
美人な三人の姉に囲まれた敦也は、一日もせずにクラス内で注目を浴びた。
そして、当の本人達は、自分たちの席に座り、女子や男子から囲まれ、チャイムが鳴るまで、話をしていた。
(なんで、こんな事になったんだ! だから、嫌だったんだ‼)
敦也は、頭を抱えながら学校登校初日で、高校に通うのが嫌いになりそうになった。
(わざわざ、地元の高校に通わずに、この学校を選んだのに……。父さん、義母さんにも今日まで、姉ちゃん達に黙っておくようにと、言っておいたのに、いつ、どこで、バレたんだ? ああ、先が思いやられる~……)
敦也が、そうして悩んでいるうちにチャイムが鳴り、教室が静まり返ると、スーツを着た若い大人の女性と三十代くらいの男性の教師が、三組の教室に入ってきた。
「おはようございます!」
と、女性の先生が、挨拶する。
「「「おはようございます!」」」
生徒達は、挨拶を返す。
「今日からこのクラスを受け持つことになりました。担任の松山美羽です。そして、隣にいるのが、副担任の林大悟先生です」
松山先生が、隣に立つ男性の教師を紹介する。
「副担任の林大悟です。よろしく」
林先生は、軽く挨拶をした。
「これから皆さんは、入学式に出席します。男女一列ずつ、出席番号順に並んでください。入学式は、男子から順に席に座ってもらいます。入学式は、大体一時間前後を予定しています。終わったら、この教室でホームルームを行います。ここまで、分からない事がある人、いますか?」
松山先生は、教室中を見渡すと、誰も手を挙げない。
「誰もいないようですので、では、廊下で静かに並んでください」
松山先生は指示を出し、生徒達は、それに従って、ぞろぞろと廊下に並び始める。
敦也もまた、列に二番目に並ぶ。
廊下には、各クラス、生徒達が並んでいる。
一番先頭のクラスは、体育館に近い六組、フロンティア科の生徒達である。それから順に普通科のクラスが並んでいる。
松山先生の合図と共に、三組も体育館に向けて、廊下を歩き始めた。
隣では、女子の出席番号の二番目に早い、唯が、敦也の隣を歩く。
胃が持たれるほど、今、体調が悪い敦也は、高校入学式に臨んだ。
入学式は、この学校の最上級生である三年生が拍手で迎え入れてくれた。
体育館の上のフロアの方では、吹奏楽部が演奏しており、新入生はそれに合わせて、入場する。
敦也も体育館内に入ると、最初に探したのは、自分の両親だった。
保護者の間を通り、目だけ、左右に動かしながら、自分の親を探す。
すると、一番前の席の新入生が通る通路の右側に両親が並んで座っていた。
敦也は、父親と目が合うと、すぐに目を逸らされる。
その様子を見た時点で、おおよその想像がついた。
敦也は、小さなため息を漏らしながら、席に座り、入学式が始まった。
入学式が終わり、新入生が退場した後——
「やっと、終わった……」
「お疲れ様、私達も教室に向かいましょうか」
「敦也と目が合ったんだが、大丈夫か?」
「大丈夫よ、きっと。だって、あの子達、皆、仲がいいんだから」
「そうかなぁ?」
心臓がバクバクした状態で、向かう父親とそれを支える母親の姿があった。
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