第34話 露出の多いワケ(新聞、テレビ、ラジオ出演)

 本を一冊出してもらっただけなのに、異常に露出が多いです。

その理由を、お話させてください。


 一言で言えば「出たがりだから!」。


あなたは、福岡県北九州市の成人式をご存知でしょうか?

キンキンビラビラのハカマや振袖は言うにおよばず、十二単や花魁(おいらん)まで登場する、アタマおかしいクソ派手な成人式。私、あの辺の出身です。とにかく目立ちたい!

 

 私はちょっと横に置いといて、可愛いあの子たちの説明をさせてください。

あの辺の子たちは、ヤンキーが多いです。親もヤンキーなら、子もヤンキー。ヤンキーならマシなほうで、昔はヤ〇ザもたくさんいました。当事者だから言えますが、アタマわるいです。そもそも教育を受けさせてもらえる環境にない。親も生活に必死ですから、食べ物を買うのが精いっぱい。教育とか長期的に物事を見る余裕がない。結果、アタマわるいまま社会に放り出される。


 学歴も資格もナイまま社会に出ると、どうなるのか? 学歴も資格もいらない仕事につきます。そして後先考えずにえっちして、できちゃった結婚になだれ込みます。今は授かり婚と言うのが一般的ですけれど、授かったと言うより「できちゃった(テヘペロ)」のほうが、この辺では事実に近い。


 高校卒業したら社会に放り出されて、あっという間に子どもができて結婚する。こういう子たちの子どもは、だいたい同じ道を歩みます。だから孫ができるのも早い。子育てが終わったと思ったら、孫の面倒を見なきゃいけない。孫もあっという間に大きくなるから、ひ孫の面倒をみている50代もいます。


 私が成人式の時、身内のおばたちから「成人式で子どもがないなんて、アンタは遅い!」って叱られましたもの。実際に私の友達、成人式で子ども抱いてましたもの。40代で孫の話してる友達も、けっこういました。どんだけ早いねん!


 それはそれで、羨ましい人生です。自分の家族がたくさんいるから。「私もできちゃった婚がしたかった!」と思いますが、後の祭りです。


 こういう子たちが人生で華々しい恰好ができるのは、成人式しかないのです。後は汗水流して働いて、自分や家族が食べていくので精一杯。そして一生を終える。

「結婚式があるじゃないか?」と思う方もいるかもしれません。フツーなら、その通りです。でもできちゃった婚をしちゃったりすると、結婚式を挙げるのも難しい。生活するだけで、いっぱいいっぱい。余分なお金はないのです。


 だから成人式は、精一杯頑張る。夢のようなキンキンビラビラを着て、はしゃぎまくる。だって次の日から退職するまで、作業着で一生を終えるのです。人生で一日くらい、キンキンビラビラを着たい。気持ちは、わからんでもない。


 え? 私ですか? 私はフツーの恰好で成人式に参加しました。ちょっとお洒落なスーツ。何度も着られるお洋服。振袖でさえない。だって私、その頃からクソ貧乏でしたもの。すでに家を出ていましたし。


 でも成人式でキンキンビラビラを着る子たちと同じ血が、私の中にも脈々と流れていました。「いつか! 絶対! 目立ってやる!」その日を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたワケです!


 時は流れ、ヤンキーの子たちは大人になりました。家庭を築き、子や孫に囲まれ、落ち着いた生活を送っています。かたや私は相変わらず一人で、相変わらず貧乏。そして数々のミラクルが重なって、本を!出してもらいました!


「目立つなら、いま!!!!!」


とは言うものの、どうしたら目立てるんだ? さっぱり方法がわかりません。


私がラッキーだったのは、親友が広報の仕事をしていたことです。


 いきなり話が変わりますけど、真面目な話をしてもいいですか?

正直、本は買ってほしいです。本が売れないと、私の収入になりません。健康保険も税金も年金だって払わないといけませんから、1冊でも多く買ってほしい。でも、お金がなくて本が買えない子たち、成人式で派手な着物を着られない子たちにも、楽しい一時をお届けしたい。全国にはムリですが、お世話になった伊賀と甲賀、あと故郷の福岡県水巻町の子たちだけでも……と、考えました。


 3つの市町にあるすべての小中学校と図書館に、本を寄贈することにしました。お金がなくて本が買えなくても、私の本だけは無料で読めるようにしたかった。

 この件で、編集さんと少々モメました。出版社にしたら、図書館や学校に本があると、本が売れなくなるからです。私だって本は売りたい。でも、それでも本が買えない子たちに楽しい時間をお届けしたい。イエスマンの私が珍しく、イエスと言わずに頑張りました。


 その話を聞いた親友(広報の仕事)が「それなら新聞やテレビで取り上げてもらって、宣伝すれば本が売れるんじゃない? 私、知り合いに声かけるし!」と言ってくれたのです。

「広報の友達とか、いねぇよ!」とツッコミたい気持ちは、わかります。私はラッキーだっただけです。でも、コレを読んだあなたはラッキーです☆ 私がその方法を伝授します!


 私の売りは「小説で賞をもらって、本が出た」です。耳にタコができるほど言われたのは「どんな賞か知らんけど、賞をもらったのはスゴイ!」です。私、ちょっとズレてたんですけど「本が出ました! 取材してください!」って記者さんたちにお願いしていました。私からすれば、本が出たのがスゴイことで、賞はぜんぜん大事じゃなかった。だから賞をもらったのは、言わなかった。ところが記者さんたちは「調べてみたら、大賞を受賞してるじゃないですか! スゴイ!」って言うのです。賞が大事なのを知っていたら「小学館から一等賞をもらいました!」って売り込んだのに、だいぶ遠回りしました。← ココ、大事です。私と同じ失敗はしないでください。


 賞をもらった本を地元に寄贈するということで、親友が甲賀市の市役所の広報さんに話をしてくれました。市役所が寄贈式をしてくださることになり、親友が新聞社や 地元のケーブルテレビ(あいコムこうか)に「記者連絡票」を書いてくれました。


 「記者連絡票」。大事です。確実にテストに出ます。これは市役所が「市役所でこういうイベントをしますから、取材に来てください」とマスコミさんに連絡する書類です。おそらく「役所のお墨付き」みたいな役割を果たす書類です。本来なら役所が書いてマスコミに連絡してくれますけれど、親友は慣れていたので書いてくれました。あなたの時は役所に「マスコミさんに記者連絡票を送って、取材の依頼をしてほしいです」と言えば、役所が動いてくれます。逆に言わないとしてくれないので、きっちりお願いしてください。


 同時進行で私は、新聞社さんに「〇月〇日 〇〇時から、甲賀市役所で拙書の寄贈式をしてもらいます。本が買えない子にも読んでほしいです。ぜひ取材に来て、情報発信をしてください」とお手紙を書きました。


 この手紙、親友からブチ切れられました。親友にしたら「苦労して記者連絡票を書いたのに、あんたが同じ情報流してどないすんねん! 丸かぶりで、記者さんが混乱するし、私のしたこと意味ナイやんけ!」です。たしかに。でも、記者連絡票には「本が買えない子に楽しい一時をお届けするために、本を寄贈します。お金がなくても無料で本が読めることを情報発信してほしいので、ぜひ取材に来てください」と書く欄がなかった。役所が送る書類は事務的なもので、私の想いを伝える欄はなかったのです。


 関わってくださった皆様には、必ずお礼のお手紙かメールを書きます。今のところ、80通くらい。するとですね「なんか頑張ってるみたいだから、テレビ出る?」とか「ラジオ出る?」とか言うお話を頂くようになりました。私は「お会いできて、嬉しかったです! ありがとうございました!」と感謝の気持ちを伝えたくて一方的に送っていたのに、思わぬ嬉しい誤算で次に繋がる。


そうこうしているうちに「学校で話してくれる?」とか「市役所の事業で講師してくれる?」とかいうお話に……。 オタオタヨゴヨゴしているうちに「コイツは本を書いたが、しゃべるのもできるらしい」という評価を頂くようになったのです。

 

 お話をするのは、ニガテです。書くほうなら後で修正ができるし、校閲さまも目を光らせてくださるので、そんなに怖くない。でもお話は一発勝負ですし、取り返しのつかない発言をすることだってある。めっちゃ怖い! 毎回、身体の上と下(どこかは察してください)が、エライことになります。ゲロゲロのピーピーです。


普段から意識して周囲に言っているのは「テレビに出たいです!」 「ラジオに出たいです!」 「新聞に出たいです!」など「出たいです!」系。いつも言っていたら、どこかで繋がるかもしれません。


というワケで、私の担当さんいわく「こんなに露出の多い新人さんは、初めて!」という事態になっております。皆様のおかげです。ありがとうございます。


そして大いなる誤算が……。


清く正しく美しい児童書を書いて、ネットで検索したら新聞記事とか載ってて、なんかメチャメチャ良い人みたいになっています。

本当は悪い人なので、誰にも言わずに内緒でカクヨムを始めました。文字を愛する仲間に向かって、おおっぴらに言えないアレコレを楽しく書いていた。

ランキングに乗ることもナイでしょうし、世間のすみっこで楽しくやっていくつもりでした。


そしたらですね。「ソウマチ」とネット検索すると、わりと上位にこの「カクヨム」が出てくるようになったのですよ!!!!!!!!!!!!

絶体絶命!!!!!!!!!!!!!!!


大失敗ですよ! 私のことをよく知らない人でも、すぐにカクヨムは読めてしまう。そして「バカ」とか「ウンコ」とか連発している黒いソウマチを知られてしまう。


あなたの時は! くれぐれも注意してください!! ブランドイメージは大事です!

私の失敗を活かして、クリーンなイメージを保ってください!!!!!


でも、いいや。目立てれば。(← 本音)。




































































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