第31話 大学除籍

 うちの親は、バカです。

生んで育ててくれた大恩のある人たちに向かって言う言葉ではありませんけれど、バカです。なにしろ両親は、お勉強が大っキライ! 「勉強しなさい」と言われたことは、一度もありません。


 私が高校に進学したいと言ったときは「なんで? 就職したら勉強せんでいいんよ? 就職したら?」と真顔で言われました。お勉強がキライな両親にとって、進学は苦痛以外の何者でもないらしい……。私が中卒で就職希望ならイイけど、本人が進学したいって言ってるんだから、進学させてくれよ……。


 なんとか高校進学を果たして、次のトラブルは3年後でした。私は大学に行きたい。でも両親は、大反対!「女の子に学歴はジャマ! 働きなさい!」

まだ若かった私は「そんなもんかなぁ~?」と思いつつ、地元で就職しました。

それから仕事を転々としましたが、スッキリしない。やりたい仕事はたくさんあるのに、学歴ではねられます。学歴のせいで、面接さえしてもらえない。

「なんだかなぁ~?」とモヤモヤした日々を過ごしました。


 いろいろな奇跡が重なって、市役所の嘱託相談員に採用されました。相談員の種類はいろいろあって、私は特に学歴も資格もいらない部署。強いて言うなら、人生の失敗が多いほどいい(笑)。専門的な相談をする方たちは、大学の学士だけでなく修士や博士の方もいます。

 

 仕事に就いてみてわかったのは、自分の知識不足でした。系統だてて学んでいないので、悩みを全体像で見ることができない。社会的な弱者がなぜ生まれるのか、どう改善すればいいのか、その方たちは何を望んでいるのか、当事者の方がわからない全体像を、私が把握していないと相談にのれない。

「これは社会学と心理学と社会福祉について学ばないと。あと歴史」

というわけで、あわてて通信制の大学に入学しました。学歴よりも、知識が欲しくなった。放送大学って、ご存知ですか? 私が入学した当時はダントツで学費が安かったので、そこにしました。


 他の大学は知りませんけれど放送大学で良かったのは、入学していきなり大学院の授業を受けられる点でした。独学で心理学を勉強してもっと知識を深めたかった私にとって、基礎と同時進行で院のお勉強ができるのは、ありがたかったです。

仕事から帰ってきたらお勉強して、休みの日は勉強三昧。新しい知識を得る経験は、とても楽しかったです。ガシガシ勉強しているうちに、興味のある分野はテストをパスして、単位を取ってしまいました。大学を卒業するためには、興味のない授業も受けないといけない。

「興味ナイことは、したくナイんだよねぇ~」と言っているうちに、仕事が忙しくなった。さらに二度目の離婚に突き進んでいたので、気持ちの余裕もなくなった。


 大学から何度も電話着信がありました。今思えば、封書もたくさん届いていた。でも気持ちも時間も余裕がなくて「どうせ、新しい受講の案内でしょ?」と放置していた。


 ある日、一通の封書が届きました。その封書は、なんだか雰囲気が違いました。ものすごく薄かった。そして「親展」とか「重要」とか「必ずご開封ください」って、たくさん書いてあった。

さすがの私も「このお手紙、なんかヘン」と感じて、封を開けました。


「貴殿を除籍します」。めっちゃシンプルな文面でした。


 大学はずっと何度も連絡をくださっていたと、同封された手紙に書いてありました。このままでは除籍になると、電話やお手紙で何度も知らせようとしてくれていた。でも私は、放置していた。

 大学を自分で辞める「中退」と、辞めさせられる「除籍」は、大きな違いがあります。除籍だけは、避けるべき。大学もそれを知っているから、何度も連絡をくれたのです。「辞めないといけないなら、中退にしたら?」という提案も入っていたと思います。なんなら休学っていう方法もあります。いくらでも方法はあったのに、除籍になってしまった……。原因は、私がバカだから。何も考えてなかった……。

 

 この経験で、私は何を学んだのか?


「親もバカなら、子もバカ」……(苦笑)。

大好きな両親に似ているなら、バカでもイイです(苦笑)。


お父さん、お母さん、産んで育ててくれて、ありがとう!!




























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