第023話 耳元

バーゲンの戦利品を広げていると、

ススッと肩を寄せてきた女友達は、

不意に私の髪を掻き上げて耳を露わにした。


「何?」


腰を捻って体を反らす。


無邪気な瞳は、

パーソナルスペースなんておかまいなしに、

私の耳元に囁く。


「ねぇ…。ピアス穴…開けない?」


タグ付きの安全ピンを摘まんだ指が視界に入る。




★☆★


まぁ。オチは実話だね。


実際は、友人が、自分の買ったスカートの値札の糸のついた安全ピンを外しながら、だったので、こちらをチラッとも見ず…だったわけだが。


(え? それで? 私の耳に穴を開けると?)


「いや、ええわ」

と返すのが、精一杯だったのぉ。



この頃から、他人様が、ピアスの穴を開けようが、整形しようが、それは個々人の考え方次第なので、

「私があれこれ言う筋合いの事ではない」

というスタンスだったのですが、我が身の事であるならば、白粉彫り(ただの刺青じゃダメだぜ。白粉彫りちゅーロマンが私の厨二心を擽っていたのさ)と、手術等の命にかかわる理由以外で、金物の味を教えるつもりはないのだ。



★☆★


次のお題は〖存在する〗

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