第56話
「……」
絶句。
今の僕の現状を表すのに絶句以外の言葉がなかった。
SSランク級冒険者のみんなは一階層の床すら破壊出来ないというのだ。
「こ、こんなに……?」
簡単に出来たはずだ。
当たり前のように出来たはずだ。
だって、人類は神を殺したのだから。
この世界に存在していた二柱の神のうちの一柱を己よりも上位の種が存在することを容認出来ないと理由だけで殺し、怒りに震える残った一柱も封印して沈めてみせたのだ。
「……」
それほどまでに堕ちた神が人類に残した『物』は蝕んでいるのか。
僕は本来人間が持っているはずの……神殺しさえも成し得た『エネルギー』が限りなく低くなっている現状に冷や汗を垂らす。
人間は食事をすることで『エネルギー』を獲得し、強烈な強さを持っていたというのに。
「「「「……」」」」
そして、SSランク級冒険者たちも僕の異常性に絶句していた。
「弱く、なっているんだなぁ……」
アルビナ帝国皇帝……全世界の頂点たる我ら一族は最初。
広大な帝国を支配する一族ではなく、邪神を殺すための一族だった。
自分という存在に伸し掛かる重りが重くなったことを感じ、僕は内心でため息を吐く。
色々と歪だよなぁ……この世界も。
神の揺りかごに揺られる平和な世界なんて血腥い人間には似合わないんだな。
「悪かったなァ……俺らが弱くて」
「いや、別に弱くはないよ。決して」
僕はガンジスの言葉に首を振る。
決して弱くなっているわけでもないだろう……『神より宿し天命』の持つ力は力は間違いなく強大だ。
人間単体では弱くなっているが。
「さて、と。今いる全員分の魔物は出てきたわけだよね?一位は僕ってことで良いよね?何か否の意見が居る人はいる?……というか、ライントはどうなるんだ?」
僕の疑問。
それに対する返答はわかりやすい形で帰ってきた。
「いくらなんでも壊れすぎじゃね?あれ」
轟音を立てて飛び出すライントと謎の怪物。
そして、宙を舞うダンジョンの入り口たる扉を見てボソリと呟いた。
「……ッ!?なんだッ!!!あれはッ!!!」
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