第54話
「あぶねー。ちょっと時間ギリギリだったわ」
帰り道に珍しい魔物がいて、遊んでいたら結構時間がギリギリになってしまった。
僕が冒険者ギルドに来たときにはライント以外の冒険者が揃っていた。
「随分と遅かったんじゃねぇの」
「いやぁー、ちょっと遊んでいたら遅れちゃったよね」
「ったく。何やってんだが」
「……もう時間ね。ライントは一体何をやっているのかしら?」
ずっと腕を組み、無言で待ち続けていたミネルバが瞳を開けて口を開く。
「あのいけ好かない男のことだもの!自分の力を過信しすぎて死んだんじゃないかしら?」
「演技でもないことを言うなや……英雄王が死ぬとか笑えねぇぞ。お前じゃあいつの代わりは務まんねぇだろうが」
「ふんッ!」
忌々し気に鼻を鳴らすニンニア。
「はぁー」
そんなニンニアを見てガンジスはため息を吐く。
「もう少しでいいから、人類の希望であるってことを理解してほしいぜ、ほんとよ」
初対面の人に剣を向けてくるような戦闘狂が本当にSSランク級冒険者の中ではマシだという珍事。
「時間なのでとりあえずは今年度のSSランク級冒険者決定を開始してもよろしいでしょうか?」
SSランク級冒険者たち。
そしてそれを囲うように集まっている大量の民衆。
そんな人達の前に立った受付嬢さんが口を開く。
「あぁ。開始してくれ」
受付嬢さんはガンジスの言葉に頷き……僕の方へと視線を向けてくる。
「そ、それでなのですが……アル様」
「ん?」
「ど、胴体はないのでしょうか?」
「デカかったからもってきていない。別に強さだけなら首でもわかるでしょ?」
強き魔物には死体からでもあふれ出るエネルギーによって強いということが感覚的に理解できる。
「武器、防具の素材に……と」
「いや、たぶん加工出来ないから意味ないよ?」
「……加工出来ないってお前、一体何をもってきたんだ」
「せっかくならダンジョンで一番強いのを持ってこようかなって思ってさ」
ガンジスの疑問に対して僕はそう返す。
「一番だァ……?」
「と、とりあえず持ってきますね!」
受付嬢さんは未だに戻ってきていないライント以外のSSランク級冒険者の狩った魔物を取りに走り去っていた。
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