第51話

「なっ、な、何を……あなた!?なんでそれを……ッ!?」


 かつて。

 ニンニアと呼ばれる傲慢不適な才女である彼女はアルビナ帝国皇帝に歯向かい……皇帝の覇気にビビッて泣きわめていたおしっこを漏らすという無様を晒して見せた。


「ん?僕にそんな言葉を使っていいと思っているの?」


「……ご、ごめん」

 

 ニンニアは素直に僕へと謝罪の言葉を口にする。

 彼女にとって自分が泣いて漏らしたなど黒歴史の何物でもなく、絶対に知られたくない事実。

 それを知っている僕に対してニンニアは強気に出れない。

 彼女は傲慢不適ながらも必要であれば他者に……自分よりも強き者に垂れる頭は持っていた。


「おおお?」

 

 僕があっさりとノーネームとニンニアを黙らせたことに対してガンジスが驚愕の声を漏らす。


「あなた何をしたの……?」

 

 そして、ミネルバは呆然と声を漏らす。


「ん-、君はどうでもいいかな。SSランク級冒険者の中で一番弱いし」


「ァ?」

 

 僕の言葉。

 それを受けてミネルバの頭に血管が浮き出る。


「テメェ……今、なんと?」


「ただの事実でしょ?去年の結果が答えで、僕は君より強い。最弱は君だ」


「……貴様ァ!!!」


 己の強さに自信を持ちながら……しかし、自分がSSランク級冒険者の中では劣っていると自覚し、コンプレックスに抱いているミネルバは僕の言葉に切れ散らかす。


「悔しかったら証明するんだな。自分の力で」


「……ちっ」

 

 ミネルバは舌打ちし、僕へと背を向ける。


「行くぞ……お前ら」


 ミネルバは自分の配下を連れて僕の前から去っていく。


「あっ、じゃあ……私も」


「……」

 

 そして、それに続くようにニンニアやノーネームも去っていく。

 彼、彼女たちはダンジョンのほうへと向かったのだろう。


「何をどうやったのかは知らないけど……随分と鮮やかな手法で全員を黙らせてみせたね」


 今まで黙ってやり取りを見ていたライントが口を開く。

 

「いつまでも新人いびりされているとか嫌だからね。これくらい別にいいでしょ?」


「ふふふ……まぁね」

 

 ライントは僕の言葉に頷いた。



 

 

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