第23話
「ごちそうさまでした」
焼きそばを完食した僕は手を合わして一言告げ、箸を仕舞う。
「ごめん。遅くなっちゃった」
「ううん。気にしなくて良いんだよ」
そして、先に食べ終わっていたマリーへと謝罪の言葉を口にする。
「じゃあ、出ようか」
「うん。そうだね」
僕とマリーは立ち上がろうとする。
「おうッ!おうッ!うるせぇぞッ!お前ら!マリボリ様が来るんだッ!黙れェ!」
ちょうど、僕たちが出ようとしたタイミングでガラの悪い大声が響き渡った。
喧噪に満ちていた酒場がしーんと静まり返り……そんな酒場の中に恐らくは貴族の息子と思われる男が入ってくる。
「何度も言っているからわかっていると思うが、この人はあの皇帝陛下にすら認められている御方だ!逆らおうだなんてするんじゃないぞ!」
「え?」
マリーがこちらへと視線を向けてくる。
「いや、全然知らんよ?」
皇帝陛下の名を語るとか普通に一族全員処刑レベルの大罪なのだが……。
多分僕が慣例で大勢に向けて告げた言葉について言っているのかな?教育機関とかで肯定的なスピーチを行うしね。
「……じゃ、じゃあ、もしかしてスピーチとかでの発言とかをとってかな?」
「多分そうだと思うよ」
僕とマリーがこしょこしょ話している間にも話は進んでいる。
「ひ、ひぃ」
街酒場の看板娘として動いていた可愛い女の子が悲鳴を上げ……そんな少女に向けて入ってきたマリボリとか言うやつが下卑たる視線を向ける。
「逃さないよぉ……うへへ」
マリボリの視線は完全に看板娘ちゃんをロックオンしており、逃げ出そうとした彼女の周りをゲス野郎と一緒に入ってきたガラの悪い男たちが囲んで逃げられなくする。
「グヘヘ」
ゲスい笑みを浮かべて近づくマリボリとか言う男。
「い、嫌……」
そんなマリボリに対して小さく拒絶の言葉を吐き、瞳に涙を浮かべる。
だが、彼女に抵抗出来る力はなく、周りの大人たちは皆顔を背ける。
「ちょっと私が言ってくるわ」
立ち上がろうとするマリー。
「僕が言ったほうが効果的でしょ」
僕はマリーを制して立ちあがった。
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