第21話
大衆文化。
一般市民からは対極の位置に存在する現人神と崇められる僕は帝国を追放された男であり、冒険者として活躍した男だ。
だからこそ、僕は大衆文化に対して慣れ親しんでいる。
だが、その点。マリーは違う。
彼女は公爵令嬢であり、蝶よ花よと育てられてきたのだ。
僕とは違って一切マリーは大衆文化に触れてこずに生きてきたのだ。
「おぉー!これが街酒場!」
マリーは初めてやってきた街酒場を見て歓声の声を上げる。多くの人が騒いで好き勝手に酒を飲む。
こんな光景をマリーは初めて見るだろう。
ちなみにだが、すでに飲食の文化は大衆の中で当たり前のものとなっていた。
「ほら。ガキども。さっさと注文良いな。わかっているだろうが、酒はだめだぞ」
男勝りの女将さんが周りを見るだけのマリーを見て口を開く。
「え?お酒は」
「ルリ」
「あっ」
僕はマリーの偽名を呼び、自制させる。
別に僕たち貴族は幼少の頃から酒を嗜むが、民衆では幼少の頃から酒を飲むの悪とされていて、18歳になるまでお酒は基本的に飲んではいけない。
ここでお酒を飲んでいる発言するのは自分たちが貴族だと言っているようなものである。
僕もマリーもお忍びで来ている。
ただの街酒場に偉大なる皇帝陛下と公爵令嬢が居るなんて知れ渡った大混乱に成るだろう。
まぁ、僕が皇帝陛下だと思うような人は誰も居ないだろうだろうけど。
「えっと、これを2つお願いします」
僕はメニューから商品を2つ選び、それを注文する。
「あいよ」
その言葉に女将さんは頷き、厨房へと声を張り上げて別のテーブルへと向かった。
「オススメの2つ頼んじゃったけど、それで良いよね?」
「えっ。あっ。うん。大丈夫だよ。メニューに乗っている料理、全部わからないから……」
貴族たちに元々流行っていた料理はフランス料理のような小さい料理であり、大きく一品ガツンとしたものはなく、僕が大衆文化として食事を流行らせたときも貴族世界では小さい料理、前菜などのバリエーションを増やしただけで、貴族のほとんどがこのメニューを知らないとする人が多いだろう。
「楽しみだなぁ……こんなところ来るの初めてだし」
「そうか」
僕とマリーが料理を待っていると、すぐに料理が運ばれてきた。
「はい。お待ち。ソース焼きそばだよ」
「おぉー!」
僕とマリーの前に置かれた大きなお皿いっぱいに盛り付けられた焼きそばを見てマリーは歓声の声を上げた。
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