第20話

「いやぁー。面白かったわね」

 

 劇を見終わったマリーが満足そうに頷く。

 

「あぁ……確かに実に興味深い内容だった」


 マリーはワイナーレ教の信者じゃないし、『神より宿し天命』が一体なんであるかなど興味もないだろう。

 彼女は純粋に一つのエンタメとして楽しみ切ったようだ。


「ねぇ。あの劇の脚本を書いたのは誰?」


「え?……えっと、確か……アインハルト・リューエンスって人だったと思うわよ」


「なるほどね……」

 

 僕はマリーの言葉に頷き、その名前を記憶する。

 この劇は僕が追放されるよりも前に見たかった劇だね。間違いなく。

 すでに人の歴史からは抹消された……限りなく正しい正史を書ける人物など街がないなく……。


「それで?この後はどうするの?」

 

 僕はマリーに尋ねる。


「えっとね……」

 

 くきゅう……。

 

「あっ」

 

 僕が尋ねた言葉。

 それに対する返答の声はマリーのかわいいおなかの音だった。


「はっ!?ちょ!?ち、違うの!!!これは!!!ふぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 表情を赤く染めたマリーが顔をうずめてそのまましゃがみこんでしまう。


「まずはおひるごはんにしようか」

 

 すでにお日様は高く上り、12時くらいにはなっている。

 朝ごはんと言う名の夜食からはかなり長い時間が経っている。

 もうおなかが空くには十分すぎるほどの時間だろう。


「うぅ……」

 

 お店へと向かう僕のあとを真っ赤な顔をしたマリーがとぼとぼとついてきた。

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