第10話

 この世界の頂点を争う第一皇子と第二皇子と僕の睨み合い。

 それに割って入れる者など誰も居ない。


「何をしているのですか」

 

 否。

 この帝国にはたった一人だけいた。


「さ、宰相……」


「ちっ」


「……」

 

 僕の父と共に帝国を作ってきた帝国のNo.2である宰相、ストレフが。

 長い間帝国のNo.2の座に座り、僕たち全員の成長を赤ん坊のときより見守ってきたストレフ。

 帝位不在の今、この帝国で最も強い権力を握っているただ帝国のためにすべてを捧げるストレフ。

 彼ならばいずれ頂点に立つことが決定している僕たち三人の中に割り込む権利と権力を有しているだろう。


「せっかくの兄弟の再開なのです。仲良くなされたらどうですか?」

 

 ストレフは僕たちよりも高いところで口を開き、言葉を話す。


「……興が削がれた」

 

 宰相を見て、第二皇子はつまらなそうに一言話し、多くの配下を引き連れて帝城の中へと戻っていく。


「……俺もこれで失礼する」

 

 第二皇子が居なくなったことを確認した第一皇子も口を開く。

 誰も連れていない第一皇子は一人で帝城の中へと戻っていく。


「第三皇子殿下」

 

 ストレフはまっすぐに僕のことを見つめて口を開く。

 

「少々お話がございます……よろしいですな?」


「うん。良いよ。サーシャ。その二人をよろしくね。彼女たちは『皇子』の客人だからね」

 

 僕は歩き出したストレフの後についていった。

 

 ■■■■■

 

 質素な……本当に必要なものしか置かれていない宰相室。

 ただ仕事をするためだけの空間。

 そこで僕と宰相は向かい合って立っていた。


「座るぞ」

  

 僕は静寂を破って口を開き、この部屋にある唯一の椅子へと腰掛け、宰相へと視線を送る。


「さて、と。この俺様を呼びつけて何のつもりだ?」

 

 噛み殺せ。

 己より上であると勘違いしている愚か者を噛み砕いて捨てろ。

 荒れ狂う自己を収めながら僕はステレフへと尋ねる。


「何のつもりにございますか?第三皇子殿下。あなた様の目的はなんでしょうか?……復讐ですかな?」

 

 僕を見下ろす宰相は口を開き……咎めるような視線を向けてくる。

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