第9話
「やぁ。よく帰ってきたね。我が弟よ」
「あぁ。帰ってきたよ。我が兄」
僕は馬車から降り、地面へと足をつけて体を大きく伸ばす。
「ふー」
帝城の前。
そこに多くの臣下を引き連れている僕と同じように金髪と碧瞳を持った麗しい男が大きく手を広げ、僕に対して有効的な態度を見せる。
「……」
僕はそれに対して嫌悪感満載の表情を浮かべ、その横を通り抜ける。
「久しぶりに会う兄を無視するとは随分と薄情な子に成長してしまったようだね」
「ん?最初に挨拶はしただろう?聞こえなかったと?うちの一族の人間ならばあれくらい聞こえて当然だと思うのだけど」
「ふん。弟であるのであれば兄の横を通る際に会釈の一つでも取ったらどうだ?」
「はて?あなたは当然のように自分の兄である第一皇子の横を素通りしていたと思っていたのだけど?」
「あれと俺は違う」
僕の言葉。
それに対しては第二皇子は傲慢不遜な態度で答える。
「そんなこと言われて、無視で良いの?」
第二皇子の言葉を聞いた僕は近くに潜んでいた第一皇子の方へと視線を送る。
「……そこまで言われ、余もずっと黙っているわけにもおるまい。貴様の他人を見下す癖は少々度が過ぎる」
第一皇子は僕と第二皇子の前にまで歩いてやってくる。
「あんたの無能ぶりは少々どころの差じゃないがな」
「ふふふ。……我が兄はブーメランが好きなようだな」
「ァ?能無が何を言って」
「僕はSSランク級冒険者であり、六文字の『神より宿し天命』持ちだ。能無などと呼ばれるような存在じゃないか?これ以上己の無能をさらけ出してどうするつもりだ?」
「……貴様ッ」
「末弟如きがあまりに図に乗らぬことだ」
「帝国歴史に残るほどの戦犯を犯したあなたは僕以上に図に乗らないことをオススメするけど?」
「それはそうだね。あなたはさっさと降りたらどうだ?」
「ふん。貴様らに任せれば世界の終わりだろうよ」
空席となっているアルビナ帝国の帝位。
それを求める権利を持っている三人が静かに……ぶつかり合う。他の面々が介入できる状況では、ない。
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