第17話

「オイオイオイ」

 

 僕は周りの民衆の期待に答え、余所者のSランク冒険者をフルボッコにしたわけだが……。

 それを遠くから見ていたこれまた強面の大男が僕の目の前に飛んでくる。


「随分と俺様の舎弟を相手に派手にやってくれたじゃねぇか?ぇ?」


 毛根を保つことが出来ている傷だらけの顔をもつ強面の大男は僕を上から目線で見下ろし、睨みつけてくる。


「……ッ!?!?」

 

 そんな強面の大男を見たマーベスさんが驚愕の表情を浮かべる。

 ……有名人なのかな?


「ふん。お前も口を防げや。クセェんだよ」

 

 僕は自分の靴をねじ込んだ大男の頭を蹴り飛ばして、意識を飛ばした後に傷だらけの顔をもつ強面の大男を睨み返す。

 冒険者である以上、敵対者に対しては強気に出た方が良いだろう。

 周りからの期待もあるしな。


「待てッ!そいつは駄目だ!そいつはSSランク冒険者が一人、剛腕王のガンジスだッ!」


「かっかっか。よく知ってんじゃねぇか」


「ふっ……剛腕王ねぇ……ただの見せかけ筋肉くんじゃなくて?」


「アッハッハッハ!良いじゃねぇかッ!俺の名前を聞いても一切ビビらねぇなんて!最高だァ!」

 

 ガンジスは僕の目の前で楽しげな笑い声を上げる。

 コイツの目……僕を睨みつける目は獲物を前に歓喜する戦闘狂のそれだった。


「『神より宿し天命:弐式:虎王牙大剣』」

 

 ガンジスは町中で唐突に『神より宿し天命』を展開する。


「待て!こ、こんなところで展開するなんて巫山戯ているのか!」

 

 そんなガンジスを見て、冒険者ギルドからやってきていたギルドマスターが大きな声を張り上げる。


「うっせぇな。相手は冒険者なんだから良いだろ?そもそもSSランク冒険者ってのは狂人どもを抑えるためのただの首輪。いつでも引きちぎられるパーフォーマンスの首輪でしかねぇ。さっさと黙っていやがれ。冒険者同士の諍いには関与しない?だろ?……オメェらも離れてろよ!巻き込まれてもしんねぇぞ!」

 

 ガンジスは遠巻きに見ている野次馬としかした民衆に向かって大声で威圧する。


「し、しかし……」


「大丈夫だよ!アルならなんら問題ないよ。私の不幸程度で沈むような人じゃないもん……そうだよね?」


「まぁ、そうだね。この程度なら何の問題もないよ」

 

 僕はマキナの言葉に肯定し、ガンジスの方へと足を一歩踏み出す。


「さっさとお前も展開しろや」


「必要ないかな。わざわざ使うほどの相手でもないかな。君は」


「そうかい……なら、死ねや」

 

 ガンジスはさも当たり前のように……殺すつもりで大剣を僕に向かって振るった。

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