第14話

「お疲れ」

 

 僕はミノタウロスを倒したミリアに労いの言葉を投げかける。


「すみません。苦戦してしまいました」


「いや、むしろ弐式を使えない身にも関わらずよくやったほうだと思うよ」

 

 壱式だけでミノタウロスを倒せるとか常識離れした強さだろう。それだけミリアの『神より宿し天命』が強く、ステータスへの補正値が大きいのだろう。


「……ほら、先に進みましょう」


「そうだな……マキナ。そろそろ君も前に出てあげて」


「え?」

 

「50層から下で壱式の状態、ソロで潜るのはかなりキツイでしょ……いや、普通に考えれば壱式だけでミノタウロスを倒せていること自体おかしいんだけど」

 

 壱式と弐式ではかなり性能に違いがある。それを壱式オンリーでここまで戦ってこれているマキナはかなりの強者……化け物の中にカテゴリーされていると言っても良いだろう。

 僕の予想通り『神より宿し天命』の性能はアルビナ帝国皇族に匹敵するレベルだろう。

 基本的には遺伝によって何もかもが決まるこの世界でハイブリット中のハイブリットである皇族に勝てるマキナは平民の中では圧倒的だろう。


「そ、そうだけど……でも私が出たら……」


「あぁ。当然弐式は使っちゃ駄目だよ?壱式縛りでお願いね」


「え?」


 僕の言葉を聞いてマキナが固まる。


「い、壱式だとかなり火力が落ちるんだけど……」


「これもまた一種の訓練だよ。このまま頑張ってよ。ふたりとも応援しているよ」


「むにゅ……しっかりと前線に立ってて。相手を殺すことは考えなくていい。殺すのは私がやるから。一緒に頑張りましょう」

 

 急に闘志をむき出しにして、やる気に全身を漲らせ始めたマキナがミリアへと声をかける。


「お任せください。マキナ様。己がすべてを使い、戦わせていただきます」


 ミリアはマキナの言葉に頷き、同じく静かに闘志を漲らせる。

 ……あれ?なんか二人とも急にやる気が上昇していない?なんで?まぁ、やる気があるのは良いことだけど。


「うん。二人とも頑張ってね」


「「はい!」」

 

 僕は闘志を漲らせ、歩き出した二人についていく。

 圧倒的な力を持っている僕にとってこんな低層のダンジョンに潜ったところでただただ無双して二人にイキることしかできない。

 今、僕に出来るのは二人に対してアドバイスを投げかけるだけ……まぁ、暇なのだが。人生暇くらいが丁度いいだろう。

 僕は気楽な気持ちで足を前に出し、進んでいく。


「……ん?」

 

 50階層を出る直前。

 嫌な力の流れがこの場を支配したのを感じ、眉をひそめる。

 ……ダンジョンくんには静かにしていてもらいたいのだけど……。

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