第13話

 50層。


「ふぐっ……」

 

 51階層へと降りる階段を守護している強大な守護者。

 巨大な斧を持ち、暴れまわっている牛頭の魔物、ミノタウロスと戦うミリアはひどく苦戦していた。


「きゃぁッ!」

 

 ミリアの振るうモーニングスターの鎖をミノタウロスの巨大な足が踏みつけ……強引に動きを止めさせる。

 今までは足を使ったミノタウロスの大振りをすべて回避していたミリアの元にミノタウロスの振るう斧が迫る。


「よいっと」

 

 僕は地面に落ちている石を拾って、ミノタウロスの斧に向けて投げつける。僕の投げつけた石は容易くミノタウロスの斧を破壊し、使い物にならなくしてやる。


「一端手を離して逃げ、もう一度展開しろ」

 

「ご指導のほどありがとうございます。ご主人さま」

 

 ミリアは僕の言葉を聞いて素早くモーニングスターから手を離し、自分の手元に再召喚する。


「……ッ!?」


「へぇー、一発で出来るんだ」

 

 自分の『神より宿し天命』を一度手から離し、再度自分の手元に持ってくるという技は地味に難しい。一発で出来る人は珍しいだろう。


「ヤァ!」

 

 獲物を失ったミノタウロスとへとミリアは距離を詰め、モーニングスターを振るう。

 ミリアは重たいモーニングスターを持ってないかのように軽やかに動き、戦う。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 斧を失ったミノタウロスは拳を振るって戦うのだが……単純にリーチの差があり、己の拳を当てる事ができない。 

 ミリアにただただ翻弄されるだけに終わる。

 どれだけミノタウロスがミリアに攻撃を当てようとその巨体を動かしても、攻撃する時以外地面にモーニングスターを転がして全力で逃げ回っているミノタウロスよりも俊敏性に勝るミリアに当たることがない。

 

「ぐぅ……」


「これで終わりです」

 

 ミリアの手によってボコボコにされ、血を流し、とうとう地面へと膝をついたミノタウロスの頭部めがけてミリアはモーニングスターを全力で振り下ろす。

 魔物にはフェイントなどという高度な知能はない。

 ミノタウロスはそのままミリアに頭を押し潰され、その生命に終わりを告げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る