第8話

「やぁ、調子はどう?」

 

 マキナとミリアを残して準備中の酒場へとやってきた僕は中でせこせこと開店準備を行っていた酒場のマスターへと声をかける。


「ん?あぁ、帰ってきたのか。アルビナ帝国の経済破綻を受けて、酒が値上げ。酒場の売上自体は下がったが、それもまだ許容範囲内で、なおかつ宝くじでの収入もあるゆえに大丈夫だ」


「なるほどね」

 

 僕はその酒場のマスターの言葉に頷く。

 どうせ冒険者たちは金を酒代にすべて溶かすのだから、あまり影響は大きくないだろうと思っていたのだが……間違いではなかったようだ。


「それなら良かったよ」


「それで?そっちのほうはどうなんだ?」


「ん?まぁ、ある程度良い感じであるよ。帝国内の奴隷商売も支配出来たし、これから世界へと拡大していくつもり。農業制作並びに料理もまた、帝国の人間には好調で、とりあえず作ってみたお店では想定以上の売上を叩き上げてくれている」

 

 僕は帝位に着くための準備も着実に行えている。

 金銭に困っている貴族に近づくことで……本当の水面下で僕の派閥は少しずつ拡大していっている。

 正攻法で上がるのは無理なので、本当に極悪非道なやり方で僕が上へと上がっていくつもりである。


「おぉ。さすがであるな。それで?俺に何か用か?お前であれば別にただただ確認するためだけに来たりはしないだろ?」


「まぁね。……いやぁ、ちょっと色々とやりたいことがあってね。まずは宝くじを本格的に商売としてやりたいのと、ここの酒場で料理を出して欲しいんだよね」


「……ふむ」

 

 僕の言葉を聞いて酒場のマスターがなんとも言えない表情を浮かべる。


「あぁ。当然宝くじを商会でやるとしてもお金を払わせてもらうよ。……宣伝とかもしてほしいからね」


「なるほどな。それであれば俺としては諸手を挙げて賛成をさせてもらいたい」


「ふふふ。そうか。……それならありがたい。さて、と。これから忙しくなるよ?色々とね。これからもよろしく頼むね?」


「あぁ。稼がせてもらっている間は俺も協力させてもらうよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る