第3話

「こ、こんなに上手くいくのかよ……」

 

 僕の力を借りることでアルビナ帝国という強大な闇の頂点へと立ち、絶大な影響力を持つようになった裏組織の長である強面の大男……ウィルミスが呆然と呟く。


「当たり前だ。僕が計画したのだから失敗などありえない」

 

 そんなウィルミスへと僕はさも当たり前かのように口を開き、言葉を話す。

 僕も上手く行くとは思って居なかった。そんな考えはおくびにも出さない。


「……ッ!?アルミス様ッ!!!」

 

 声をかけられたことでようやく僕に気がついたウィルミスが僕へと跪き、頭をたれる。


「な、何用でしょうか……?」


「わかるだろう?こんな時に僕が来たのであれば要件は一つだろう?」


「ね、ねずみ講の件ですね……アルミス様の命令どおりに行動。すべて計画通りに進みました」


「金は?」


「こ、こちらに」

 

 ウィルミスが示した先にあるワゴン。

 そこにあるのは多くの人々を破産させて積み上げた膨大な金貨だった。


「これを貰って僕が動こう」


「……ッ!?あ、あ、あなた様がッ!?」


 僕の言葉を聞いて、ウィルミスが驚愕の表情を浮かべる。


「あぁ。民衆にも僕の名前を知ってもらわなければな。どうせ、僕の名前を出して動いたところで皇族の連中は僕にまでたどり着くことなど出来ないだろう。長年暗躍していた僕の存在にすら気づけ無いのだから」


「そ、そうですね……」


「まずは大規模に農業を行う」


「の、農業……?」


 ウィルミスも農業くらい知っているだろう。

 この世界だとかなりマイナーな趣味であり……後はお酒の原材料であるエールを育てるための物というのがこの世界の認識である。

 エールの栽培は既に十分。農業を大規模に行うなど言われてもあまりピンと来ないだろう。


「あぁ。そうだ。多くの人間に職がなく、暇に溺れ、金銭を払って奴隷で遊び、様々な娯楽を求める。まずは民衆たちに職を与える。そして、食事という新たなる娯楽を民衆へと教える。それこそが僕の計画だ」

 

 民衆たちは本当に娯楽に飢えているのである。

 新しい娯楽にはすぐに飛びつくだろうし、暇つぶし用として農業を売り込めば上手く人が集まってくれるだろう。


 本当であれば金など必要のない人間を相手に商売を行うのは無理だと思っていたが……こんな世界であるからこそ人間の欲は凄まじく、商売のやりやすさで言えばこの世界の方が上だった。


「あぁ。すまん。まずは農業と言ったが、とりあえずは破産して税が払えない人間を買い漁るところからだな」

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