第2話
「へぇ」
酒場のマスターの言葉。
それを聞いて僕は笑みを浮かべる。どうやら想定通りに進んでくれたようだ。
「すまない。マキナ。急用が出来た。買い物にはいけない」
「……えっ」
「後、一週間ほどこの街からおさらばするから」
「……?」
僕の言っていることが理解できないと言わんばかりの表情を浮かべているマキナから視線を外し、酒場のマスターの方へと視線を移す。
「一週間ほど開ける。一週間なら本格的なダメージは負わないだろう。それにもし、酒場の売れ引きが悪くなっても宝くじの売上は上がっていくはずだ。一週間ほど任せた」
「ふっ。任されるまでのことはない。もとより俺の酒場だ……あぁ。当然勝手にお前の意向を無視して別のことを始めようとしたりなんかしない安心してくれ。お前の恐ろしさと有能さは嫌というほどに理解してくれるからな」
「ありがたい」
僕は一階にマキナと酒場のマスターを残し、自室がある二階へと上がっていく。
「案外上手くいくんだな。普通に失敗すると思ったんだけど……一国を経済破綻させ、混乱の渦に叩き込んだねずみ講さんの力は格別だな」
僕はアルビナ帝国内の裏組織の人間に商会を作らせ、ねずみ講を流行らせたのである。
裏組織との交流が深い第一皇子……皇太子へと圧力をかけ、皇太子公認という装飾を施してやれば簡単に民衆はハマってくれた。
そして、民衆どころか貴族たちですらハマってくれた。
想像以上の大事になったし、サクサク何の障害もなく計画が進むので、なんか逆に危ないと思ったのだが……最後の最後まで何か起きることはなく、万事上手く行ってくれた。
「さぁて、ここから本格的に暗躍の時間だ」
僕は笑みを浮かべ、笑い声を漏らしながら
『喰らえ、喰らえ、喰らえ、すべてを喰らい、頂点へと手を伸ばせッ!!!』
僕の心の中で熱く煮えたぎっている声に苦笑する。さっきからずっと己の本能が疼き、叫んでいる。
別に僕はこんなにも頂点を目指す熱血キャラじゃなかったんだけどなぁ。
「くくく……」
僕の体はこれ以上ないまでに高揚していた。
■■■■■
雲に隠されし太陽の下。
一人の怪物が嗤った。
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