第23話
「なるほど。君が今、噂のアル君か」
ダンジョン探索を終え、冒険者ギルドの酒場でマキナと共に酒を飲んでいた僕の元にとある男女の集団が近づいてくる。
そして、その集団の一番前を歩いていた男が僕に向かって口を開く。
「あ、そこ。危ないですよ。そろそろどこから何らかの衝撃で飛ばされた石が飛んできますので」
「……は?何を言っているんだ?」
唐突に……特に詳しい説明のなしに話した僕の言葉。
だが、これだけの説明でこの街に住んでいる人間であればすぐに理解してくれる。
「危ないですよってば」
僕は強引に男の腕を掴み、持ち上げる。
その瞬間。
轟音が鳴り響き、埃と土埃が舞い、木屑が雨のように降り注ぐ。
お酒の中にゴミが入らないようにするため、蓋をしている。
「……は?」
さっきまで男が立っていた場所にはそこそこの大きさの石が鎮座していた。
僕の言葉通り、なんでかはわからないけどどこか遠いところで飛ばされた石がマキナの近くへと飛ばされてきたのである。
空いてしまった冒険者ギルドの穴はそういうのを塞ぐことが出来る『神より宿し天命』の開放能力を持つ人たちが行ってくれることだろう。
「よいしょっと」
僕は掴んでいた男を飛ばされてきた石の上に乗せる。
「それで?僕に一体何の用ですか?」
僕は石の上に乗せられた男へと尋ねる。
「えっ?あっ……えっと、だな。お、俺たちはAランク冒険者たちで構成されている今、この街で最も名声を集める冒険者パーティーだ。そんなパーティーの一員に君もならないかと誘いにき」
「あ、お断りします」
僕は男の言葉に対して即答する。
「自分のパーティーメンバーはマキナ唯一人なので」
「……アルッ!」
僕の言葉を目の前で聞いていたマキナが瞳を輝かせる。
自分自身に対して絶対の自信を持っている自分よりも格下の相手とパーティーを組むとか御免被る。
僕は楽しく、ダラダラと生きていくと決めているのだ。マキナと言うトラブルメーカーと一緒にいる生活を僕は案外気に入っているのである。それを手放したいとは思わない。
「なっ!?俺たちのパーティーメンバーとなることを断るのかッ!?」
断られるとは露にも思っていなかったのか、僕の言葉を聞いた男が驚愕し、僕の方へと詰め寄ってくる。
「うへぇ」
面倒なことになりそう。
「誰か助けてくれッ!」
そんなことを思った矢先。
冒険者ギルドへと血だらけの冒険者が飛び込んでくる。明らかな面倒事だろう。
僕は思わず心の中でナイスッ!と叫んでしまった。
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