第22話
服の買い物を終えた僕たちは昼飯を食べるために冒険者御用達の料理店へとやってきた。
「へい!お待ち!」
元冒険者のイカついおじさんが僕たちの前に魔物肉のステーキ肉を置く。
ちなみにこの世界の料理の種類は基本的に焼く一辺倒。アルビナ帝国という世界最大の大帝国の宮廷料理レベルとなってようやく煮るという調理方法が出てくる。
そんな料理レベルのこの世界では当然料理の誠意工夫など存在しない。
そのため、基本的に食事は民衆の娯楽としての立場を確立していない。
「いただきます」
僕は前世からの習慣である食べる前の挨拶を行ってから、ステーキ肉を口へと頬張る。
肉からほんの僅かなエネルギーが流れ込んでくるのを感じる。
まぁ、入ってくる力はあまりにも少なく、僕の強さに対して何か影響を及ぼせるものでもない。
53万の戦闘力に対して0.001の戦闘力をプラスしているかの如きである。
「んー。やはり魔物のステーキ肉は美味しい。力が流れ込み、強くなるのを感じる!」
「だね」
僕はマキナの言葉に同意する。
「んー。この料理をもっと美味しく作れたら良いんだけど」
食事を民衆の娯楽にすることが出来ればかなりの市場になり、大きなビジネスチャンスになるだろう。
この世界の民衆は娯楽に飢えている。
「……ん?料理を美味しく?」
僕の言葉を聞いたマキナが理解出来ないと言わんばかりに首を傾げる。
料理とは肉を焼く行為であり、より美味しくするための行為であると考えている人は少ない。
「そう。一つの味しかなくて寂しいじゃん?なんか、こうもっと色々な食べれるものを使ってもっと色々な味のする、もっと美味しい料理を作りたいなって」
この世界の動植物に毒が含まれている生命は存在しない。
毒で死ぬ危険性がないため、かなり安全に新しい食料品の開発を行うことができると思う。
「おぉー!食事がもっと美味しくなるのは良いことだね!」
「でしょー?」
僕とマキナはダラダラとお喋りしながらご飯を食べ進めていく。
「それで?この後はどうする?ダンジョン行く?」
ご飯をほとんど食べ終えた頃になって僕は口を開いてマキナに尋ねる。
「いや、今日はダンジョン行きたくない!いつもしているじゃんか!アルは色々と街を見て回ってはいるけど……景色の良いところとかを探したりはしないでしょ?この街のきれいなところに案内するよ!」
「おぉー。それは楽しみだ」
僕とマキナのデートはまだまだ続く。今日一日中ずっとやっているだろう。
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