第21話

「ひどい!最近ずっと私に構ってくれていない!」

 

 朝。

 美味しい朝食を食べている時、マキナが僕に向かってそう話す。


「なんかいつも出かけて、家に居ない……ダンジョンに入る時しか構ってくれない……寂しい」

 

 マキナが頬を膨らませ、自身の不平不満を僕に向けてくる。


「良い?私と関わってくれる人はもうアルしか居ないの!もっと私を大切にして、もっと私と遊んでくれないと駄目なんだから!」


「どういうルール……?」

 

 マキナのあんまりな言葉に僕は首を傾げる。


「むぅ!!!」


「良し。じゃあ、どっか行く?ダンジョン以外で。僕ってば服これしかないから、他の服とかも買いたいんだよね」

 

 僕の持っている服は一着だけ。

 これを毎日洗って乾かして……使い回しているのである。他にも服があって良い。


「うん!行こ!服屋!」

 

 マキナは僕の申し出に対してこれ以上無い笑顔で頷いた。

 

 ■■■■■

 

 この世界で最大の産業がアパレル産業である。

 故に、この世界の服の種類、美しさは元の世界すら超える。

 

「どれが良いかな?」

 

 マキナは楽しそうに……恐る恐る丁寧に服を手にとって自分の体に当てて見せる。

 ……本当にすごいのだが、マキナが居るだけでありとあらゆる不幸が引き起こされる。もう普通に呪いの域に達していると思う。


 その不幸によって店に迷惑がかからないようにするために行動するのは非常に困難であると言わざるを得ない。

 マジでマキナの不幸具合は尋常じゃない。


「どう?似合っている?」

 

 マキナが自分に服を当て、見せてくる。

 今、当てている服はどちらかと言うとクールめな服だった。


「うん。すごく似合っているよ」


「えへへ。そう?それなら良かった……じゃあ!じゃあ!こっちは!」


 次にマキナが見せてきた服はかわいい感じのフリフリの多くついた服。 


「そっちも似合っているよ」


「どっちが似合っている?」


「うーん。甲乙つけがたいな。前の服はクールな感じで、今の服はかわいい感じの服。マキナはどっちも似合っているから」


「そぉ?ありがと」

 

 マキナが楽しく服を選んでいる間に僕はちゃちゃっと自分の服を選んで行く。

 欲しいのはパジャマと、動き安い普段遣いの服に……もう一つちゃんとした服。

 僕は三着ほどなんとなくの直感で選び、自分の買い物を終わらせる。


「ねぇ!ねぇ!可愛くない?」


「うん。とってもかわいいよ」

 

 女の子の買い物は長い。

 それはたとえ異世界であっても変わることのない永遠の真理である。

 僕はマキナの言葉に同意しながら、マキナの買い物に付き合った。

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