第20話

「おぉー。想像以上にお金が集まっているね」

 

 酒場で始めた宝くじビジネス。

 それは僕の想像以上の大成功を収めていた。みんな一発の夢を見ているのか、みんな娯楽に飢えているのか。

 連日連夜民衆が宝くじを買い漁り、当選発表で一喜一憂していた。

 

 集まってきた金額は既に小遣い稼ぎの域を大きく超えたものとなっていた。

 そして、連日連夜民衆が酒場へと来るものだから、普通の酒場業も好調そのもの。最近は二階建てにし、奴隷に仕事を手伝わせている。

 

「俺の直感はこれ以上ないまでに正しかったようだな」

 

 今月分の稼ぎを見ている酒場のマスターが表情をニヤつかせて呟く。


「そうだね……まさか、ここまで上手く行くとは思っていなかったよ」

 

 この世界では食事を摂らなくとも人は死なない。衣食住のうち、衣住だけ揃えれば良く、一度それらを揃えてしまえば、他の出費は国に収めなきゃいけない税だけ。

 民衆は想像以上にお金を余らせ、娯楽に飢えているということがわかった。

 

 まぁ、もうすぐすれば娯楽に飢えるほどお金を余らせるようなことにはならないだろうけど。

 超大国であるアルビナ帝国は世界最大の市場であり、生産国。

 アルビナ帝国からの輸入品が来なければ人が満足に物を作ることは難しくなり、そして、作っても満足に売る事ができない。

 アルビナ帝国という存在は世界の中でも大きく……そして、僕はそんな帝国が揺れるようなおみやげを置いて来た。

 

 もうすぐ本格的にアルビナ帝国が傾くことになるだろう。

 その時はここまで宝くじビジネスは上手くいかなくなるだろう。


「さて、と。次は一体どんなビジネスを展開するんだ?」


「ん?あぁ、奴隷ビジネスを展開するつもりだよ」


「奴隷ビジネス?」


「うん。そうだよ」

 

 奴隷。

 それは税が払えなかった人間がなる……ゴミ扱いされる身分の存在。


「奴隷商人は徴税人との蜜月関係にあり、税金を支払えなかった存在はすべて懇意にしている奴隷商人へと送られる。今更奴隷ビジネスに参入するのは無理があるのであはないか?」


「ふふふ。大丈夫。僕には徴税人とのコネクションがちゃんとあるからね。ふふふ……見ててよ。数年間で僕が世界最大の商人になってあげるから」


 さぁ、産業革命を始めよう。

 奴隷の命を燃料にして。

 この世界のお金の回り方、産業構造をすべてひっくり返してあげよう。

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