第17話

「ったく!あんちゃんは随分と強いんだな!」


「ここまで冒険者がたくさん居るこの場所で誰よりも強い発言はすごいなァ!おい!」


「事実だからね」 

 

「違いねぇッ!『神より宿し天命』を素手で押しつぶすとか聞いたことねぇし、誰にも出来ねぇだろうよ!」

 

「ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」

 

 僕は今、酒場に居る冒険者たちと楽しくお酒を飲み、楽しんでいた。


「それにしてもここまで強い奴が無名だったとか実に不思議だな……オイッ。今まではどこで暮らしていたんだ?」


「ん?……まぁ、適当に各地を適当に転々としていたかな。僕は」


「おぉー。じゃあ、なんか面白い遊びとかはないのか?」


「あぁ。あるとも。他人からお金を奪い、お金を奪われるゲームだよ。みんな。僕に銅貨3枚ずつ僕にくれない?」

 

 僕は今、僕と共に酒を飲んでいる四人にそう告げる。


「おう。良いぞ」

 

 お酒に酔っているこいつらはまともな思考回路が存在しない。ホイホイ僕の言葉に頷き、お金を渡してくれる。


「おけー」

 

 僕はお金をもらい、テーブルの上に置いて次は割り箸を手に取る。

 この国は西洋風の文化なのだが……一部中華、和の文化も混ざっていて、普通に割り箸ともある。

 割り箸を二つ割り、出来た棒4つのうち一つを途中で割り、一つだけ差別化を図る。


「ルールは簡単。この割り箸を引いて、さっき作った特別な割り箸を手にとった人間に銅貨10枚を渡す。それだけ」

 

 僕は銅貨を二つほどネコババし、10の銅貨を四人の前に出す。


「簡単に自分のお金が増やせるゲーム。……どう?やる?」


「おぉー!良いじゃねぇか!俺は豪運で名を馳せている男だぞッ!乗ったァッ!」


 酒に酔いまくっている男たちはホイホイとゲーム参加を告げる。

 この世界で算術出来る平民なんて居ない。銅貨三枚、四人出したから銅貨12枚。銅貨2枚どこ行ったんだ?なんて簡単な掛け算と引き算が出来る奴は居ない。


「じゃあ、どうぞ」

 

 男たちは割り箸をホイホイと引く。


「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!俺だッ!これは全部俺のもん!」


「クソッ!ありえねぇ!もう一度だッ!」


「良いよ。じゃあ、銅貨三枚を」

 

 ゲームは第二回戦へと突入する。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!また俺だァ!」


「クソぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!ありえねぇッ!もう一度だッ!」


「おい!どうせやるならもっとスリリングに行こうぜッ!銀貨でやろうぜッ!」


「良いじゃねぇか!ほら!全員銀貨出せぇッ!」

 

 そして、掛け金がどんどんあがっていくのであった。

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