第11話

「そっちに魔物たちが行ったよー」 

 

 僕は自分の足元で暴れている魔物を踏みつけながらマキナの方へと声をかける。


「了解!『弐式開放:烈火天穹』」

 

 マキナの手に握られている彼女の『神より宿す天命』である紅五炎弓からマグマのように熱い炎の巨大な矢が五つ放たれ、マキナの方へと向かっていった魔物たちが灰へと変えさせられる。


「よっと」

 

 マキナが魔物たちを殲滅したことを確認した僕はずっと踏みつけにしていた魔物を踏み潰す。

 ……踏み潰したのは失敗だったな。

 足元に不快な感触が残った。


「おつかれー」

 

「うん!魔物をせき止めてくれててありがと!」


「あぁ。うん、これくらいはね」

 

 僕が戦えば67層の魔物くらい瞬殺できるのだが……マキナをずっとぼーっと立たせて無双するのもなんだかなぁ、と思ったので、僕はマキナのサポート役を徹しているのだった。


「ん?こっちに魔物が向かってきているな」

 

 僕はこっちの方へと近づいてきている魔物の気配を感じ、口を開く。


「何匹?」


「ん?一匹しないよ……そこそこ強そうではあるけど、最強格と言うわけではないかな」


「なるほど!じゃあ、そいつは私が倒すから任せて!」


「了解。……じゃあ、任せたよ」


「うん!任せて!」

 

 僕が今いる69層のダンジョンは迷路のようなに入り乱れている狭い道のステージであり……僕が視線を向けている角から魔物が曲がってその姿を現す。


「ッ!?その魔物はッ!?」

 

 現れた魔物。

 それを見てマキナが驚きと恐れの声を上げる。


「あぁ……見た目がキツイか。なら、僕が倒しておくよ」


 現れた魔物の見た目。 

 それは巨大な蝿の魔物であった。見た目はキモくて、虫嫌いな人が見たら卒倒しそうな見た目の魔物である。


「え……?あっ!」

 

 僕は刀剣を手に取り、地面を

 そして、壁へと足をつけて再び跳躍して一閃。

 巨大な蝿の魔物の頭を吹き飛ばす。


「はい。終わり……ん?」

 

 ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ

 

「うへぇ。きも」

  

 殺した蝿の魔物の体を突き破って道を塞ぐほどの大量の黒い波が……小さな蝿たちが溢れ出してこちらへと向かってくる。


「……ぁあ!や、やっぱり!」


「『壱式開放:百花』」

 

 僕は『神より宿し天命』に込められている力を開放し、奇跡を巻き起こす。

 まぁ、魔法みたいなものだ。

 僕が何もせずとも宙を駆け抜ける百の斬撃が蝿の魔物を斬り刻み……何もかもが塵となって消えていく。


「なんかずっと焦っていたけど、あのキモいのについて知っているの?あんなの初めて見たんだけど」


 僕が蝿の魔物と戦っている間、焦っていたマキナへと視線を送り、尋ねる。 


「……へ?」

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