第12話

 蝿の魔物……そして、それを倒した時に出てきた大量の良くわからない小さな蝿たち。

 それを倒した僕たちは時間も良い感じだったので、引き返すことにしたのだった。

 ちなみにマキナはこの蝿の魔物について詳しく教えてくれなかった。


「こ、これは……ドミヌスの幼体の結晶ッ!?」 

 

 魔物を倒し、売れそうなところを剥ぎ取った来た素材。

 受付嬢さんは僕たちの持ってきた蝿の魔物を倒した時に出てきた大量の小さな蝿を倒したときに残った結晶を見て驚愕の声を上げる。


「これをあなたたちがッ!?嘘ッ!!!あり得ない!?……マキナ様じゃ無理……じゃ、じゃあアル様が……?」

 

「え、ま、まぁ。そうですね」


「嘘……」

 

 僕が受付嬢さんの言葉に頷くと、受付嬢さんは現実を受け止められないと言わんばかりの表情を浮かべている。


「あ、あの……すみません。僕はこれについてあまり詳しくないんですけど。なんか……僕、やっちゃいましたか?」


「知らないんですかッ!?これはドミヌスと呼ばれる強力な魔物の子供たちなのです。その数は軽く億に達すると言われていて、最上位の冒険者であってもあっという間に食い殺す恐ろしい魔物なのです」


 そんなに強い魔物だったのか……あいつ。


「あっ!」

 

「子供を孕んでいるドミヌスと出会うことはまず無い……流石はマキナ様の悪運ですね……」


「……」


「悪運?」


 僕は受付嬢さんの言葉に疑問を抱く。


「えっ!?あっ……えっ、と。その……それは」

 

「あぁ。なるほど」

 

 僕はしどろもどろになっているマキナを見て納得する。

 マキナが他の冒険者たちから避けられていた理由を察する。


「その……わ、私ってば運が悪くて……。ほ、他の人も色々とひどいことに巻き込んじゃって……こんな私が何も言わずに一緒に居てごめんなさい!」

 

 マキナが勢いよく僕に向かって頭を下げる。


「たわけ。マキナがここまで生きてこられるほどの悪運が我が道の邪魔となるわけがないだろ」

 

 僕は理不尽レベルに強いし、前世の記憶もある知能、知識面でも世界有数。

 ただの悪運ごときに崩される僕ではない。マキナはここまで生きてくることができているわけだし、ただ一人の人間を殺す事もできない程度の悪運で僕が揺るぐことはない。

 悪運なんかよりもマキナとの関係の方が重要だ。今更寝所を探すの面倒だ。この街で良い宿屋を見つけるのは至難の技なのだ。


「ふへへ……そっか。ありがと」

 

 僕の言葉を聞いたマキナはこれ以上ないまでに嬉しそうな表情を浮かべながら僕にお礼の言葉を告げた。


「ん?なんで私はいきなり惚気を見せられているの?行き遅れている私への当てつけ?」

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