第10話
次の日。
僕とマキナは共にダンジョンの前へとやってきていた。
ダンジョンへと入る扉……それは非常に小さく、人の多い時間帯だと冒険者はギルド職員の案内の元、行儀正しく扉を通っていくことになるのだが……。
「……なにこれ」
何故かは知らないけどマキナが現れた瞬間に冒険者たちの列が一気に捌け、すぐに扉にまで向かうことができるようになっていた。
なんで?……ちょっとマキナってば他人から避けられ過ぎじゃない?
「ほら、行こ?」
空いた道をマキナが意気揚々と歩き始める。なんだこれ。マジでなんだこれ。何?マキナってばなんか特別待遇を受けているの?
本当に不思議である。
「……ん?」
僕は意気揚々と歩き出したマキナの後を追ってゆっくりと歩いていると、突然何か嫌な予感が走り、身構える。
「『神より宿し天命:壱式:双刀』」
そして、上から落ちてきていた花瓶を慌てて取り出した刀剣で切り落とし、難を逃れる。
僕の嫌な予感は当たっていたようだ。
「わわッ!?」
自分の真上で砕け散った花瓶を前にマキナが動揺と驚愕が折り混ざったような声を上げる。
「……上に建物なんてないのに。どこから落ちてきたの?この花瓶……巨大な鳥が運んできたんか?」
僕は上から降ってきた花瓶を見て首を傾げる。ダンジョンへと入る扉の上に建物なんてない。一体どこからこいつが落ちてきたというのだろうか?
まじで不思議である。僕には理解出来ない事象が起こっていた。
「ご、ごめんね……」
花瓶を切り裂いた僕にマキナが謝罪の言葉を口にする。
そんなマキナを前に僕は首を傾げ、口を開く。
「ん?なんでマキナが僕に謝るの……?花瓶が落ちてきたことに対してマキナは関係無いだろ。ただちょっと運が悪かっただけだよ。なんで謝っているの?」
「で、でも……その」
「ほら、良いから。早くダンジョンに行くよ?周りでなんか列を開けてくれた他の冒険者たちにも申し訳ないし」
「あっ」
僕はその場に立ち尽くしていたマキナの手を取り、ダンジョンの扉の方へと向かっていく。
「そういえば本当に67層で良いの……?もっと下の階層にいけるんでしょ?私と一緒にいてくれて、迷惑じゃないと良いのだけど……」
「あぁ。別に問題ないよ。僕はそんな一生懸命ダンジョンに潜りたいわけではないからね。67層で潜るのも567層で潜るのも一緒だよ」
「それなら良かった……」
僕とマキナはダンジョンへと入る扉を開けて、その中へと入り、67層の方へと転移したのだった。
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